2020年までのネット銀行業界は、楽天銀行の住信SBIネット銀行による2大巨頭時代でした。そして、総合力で楽天銀行が頭一つリードしているような状況でした。
2021年に状況が一変します。auじぶん銀行が優遇金利0.2%(楽天銀行の2倍)を打ち出し、猛追を開始したのです。この結果、ネット銀行は一気に三国時代の様相を呈してきました。
そして、2022年4月から、この三国時代の力関係に大きな影響を与えるリニューアルが楽天銀行とauじぶん銀行で同時に行われます。
このような動きを受けて、マネーリテラシー高めに生きたい人は『どのように考え』『楽天銀行とauじぶん銀行』のどちらを選べば良いのでしょうか?
私は楽天銀行もauじぶん銀行も現在進行形で利用中です。そんな利用者の目線でそれぞれの強みと自分にあったメインバンクの選び方(楽天銀行 VS じぶん銀行)を解説したいと思います。
2022年4月から楽天銀行とauじぶん銀行が同時に変わる
まずは、楽天銀行とauじぶん銀行を検討する上で、知っておくべきニュースです。2022年4月から楽天銀行もauじぶん銀行も強みに大きな影響のあるリニューアルを予定しています。
楽天銀行の改悪
楽天銀行といえば、楽天証券との連携(マネーブリッジ)による優遇金利0.1%が魅力でした。しかし、この優遇内容が改悪されます。

これまでは残高に対して一律で0.1%の利息が貰えていましたが、残高が300万円を超える部分については2022年4月からは0.04%しか利息が貰えなくなります。
300万円以上の貯金がある人に悪影響のある変更です。
auじぶん銀行の改善
ネット銀行の最大の魅力といえば、他行宛振込手数料の無料でしょう。auじぶん銀行の最大の弱点が、この無料回数が少ないことでした。
auじぶん銀行のランクアップ制度(旧)では、じぶんプラス4の月8回無料に到達できれば利便性も高いですが、それ未満だと無料回数0〜1回と利便性では心もとなかったのです。
しかし、2022年4月からランクアップ制度が5段階→4段階にリニューアルです。そして、下級ランクに対するサービスの手厚さが大幅に改善される予定です。

さらに、最高ランク(プレミアム)を目指すのも実はさほど難しくないのです。
auじぶん銀行の強み
【強み①】預金金利は日本最高水準0.2%
auじぶん銀行の普通預金金利は楽天銀行(0.1%)の2倍。住信SBIネット銀行(0.01%)の20倍。都市銀行(0.001%)の200倍です。
このカテゴリーではライバルに対して元々大幅にリードしています。そして、楽天銀行と異なり、優遇金利の適用に残高上限がありません。この点は貯蓄口座に大きな金額を保有する人にとっては重要なポイントになるでしょう。
【強み②】他行振込手数料が最低でも月3回無料に
リニューアル後のauじぶん銀行は、一番下のランクでも月3回他行宛振込手数料が無料になります。そして、三菱UFJ銀行宛であれば何回でも無料です。
これは決定的な改善です。『振込無料回数』が前述のとおり、auじぶん銀行の最大の弱点でした。リニューアル後は、このカテゴリーでも強みとして主張できる水準に大幅改善します。
なんと、auじぶん銀行は初期ランクで、楽天銀行の最上位ランクと同じ無料振込回数(月3回)がもらえるのです。そしてプレミアムなら楽天銀行の5倍にあたる月15回まで振込手数料が無料になります。
【振込無料回数】
auじぶん銀行 | 楽天銀行 | ||
レギュラー | 月3回 | ベーシック | 月0回 |
シルバー | 月5回 | アドバンスト | 月1回 |
ゴールド | 月10回 | プレミアム | 月2回 |
プレミアム | 月15回 | VIP | 月3回 |
ー | ー | スーパーVIP | 月3回 |
【ATM出金無料回数】
auじぶん銀行 | 楽天銀行 | ||
レギュラー | 月2回 | ベーシック | 月0回 |
シルバー | 月5回 | アドバンスト | 月1回 |
ゴールド | 月10回 | プレミアム | 月2回 |
プレミアム | 月15回 | VIP | 月5回 |
ー | ー | スーパーVIP | 月7回 |
【強み③】スマホATM
これまでATMでお金を下す時は、キャッシュカードを使うのが常識でした。しかし、この数年の間にスマホ1台でATMでお金の出し入れをできる時代になっています。auじぶん銀行も時代に流れに追随しており、スマホにアプリをダウンロードすることで、キャッシュカードを持ち歩く必要がありません。

auじぶん銀行の弱み
主要ネット銀行はグループに証券会社を抱えており、この証券会社との連携によるサービス充実が売りだったります。
楽天銀行なら楽天証券、住信SBIネット銀行ならSBI証券ですね。楽天証券もSBI証券もクレカ積立・取扱商品豊富・使いやすい画面と充実しています。
auじぶん銀行の提携先はauカブコム証券なのですが、クレカ積立は出来ないですし(←au Payカードで毎月5万円(還元率1%)を上限とするクレカ積立が可能になりました!)、画面も初心者には非常に分かりにくいです。
このためauカブコム証券は楽天証券やSBI証券と比較すると、まだ見劣りがします。auじぶん銀行の弱みとしては、提携先の証券会社の魅力が薄いという点が挙げられます。
(追記2022年7月10日)
相変わらず、利用画面は楽天証券やSBI証券と比較して見にくい点は要改善との印象ですが、クレジットカードの積立制度(au Payカード)の導入によりお得なポイント還元制度では先発組の楽天とSBIに並びました。そして、Pontaポイントは用途も幅広く使えるので証券会社の魅力もグッと増したと言えるでしょう。
楽天銀行の強み
純粋な銀行サービスや金利水準では、auじぶん銀行に対して完全に劣るようになってしまいました。しかし、楽天銀行は楽天経済圏の他サービスとの繋がりという点がライバルにはない強みです。
【強み①】楽天証券との連携で資産運用が便利

楽天証券とマネーブリッジを組むことができます。マネーブリッジとは、楽天証券に入金しなくても楽天銀行の口座に残高があれば、そのお金で投資信託やETFを買えるサービスです。
(楽天証券は楽天カードのクレカ積立(ポイント還元)などの経済的メリットが充実してるほか、初心者でも感覚的に操作できる使いやすさから超優良の証券会社です)。
資産運用を始めると、定期積立を行う人が多いと思いますが、マネーブリッジを組んでおけば毎月入金する手間が省けます。資産運用は超長期にかけて行うものなので、この手間削減の有り難みが投資を始めると良く分かります。
【強み②】楽天市場のSPUアップ
楽天市場(ネットショッピング)での還元率を上げるのに、楽天銀行は重要な役割を果たしています。楽天銀行口座で楽天カードの利用代金引き落としを行うと、還元率が+1%追加されます。
楽天ふるさと納税(楽天市場で返礼品を購入できる)は現代の錬金術であり、この際に手軽に還元率を上げておく手段として楽天銀行の貢献度は重要です。
楽天銀行とauじぶん銀行の使い分け
メインバンクを選ぶ基準は人それぞれですが、私が考える時のポイントは以下の3つです。① の経済圏との魅力では未だ楽天銀行に軍配が上がると思います。一方で、②振込無料回数と③金利水準はauじぶん銀行に軍配があがります。
以上を踏まえて、楽天銀行を選ぶべき人、auじぶん銀行を選ぶべき人を考えてみました。ちなみに私は両方使っています。
【パターン①】楽天市場/楽天証券を使わない人
楽天証券で資産運用をしない人や、楽天経済圏との付き合いが薄い人は、サービス内容や金利水準で完全に上位互換であるauじぶん銀行が最適解になるでしょう。
楽天経済圏と絡まない楽天銀行の優位性は2022年4月以降はほぼありません。
【パターン②】楽天経済圏で生きている人
『楽天経済圏にどっぷりとつかっているよ』という人の場合は、少し複雑です。
銀行預金残高が100万円以下の場合
金融資産が100万円未満の場合、楽天銀行だけで十分かと思います。
銀行口座の本分は日常決済の引き落としですから、この段階で資金分散をさせるのは得策ではありません。残高不足で引き落としに失敗すると、信用スコアに大減点を喰らうのでマネリタどころではありません(クレジットカードが作れなくなったり、住宅ローンが組めなくなるなど弊害が発生します)。
まずは、楽天銀行に資金を集約してVIPランクを目指しましょう。この段階では、楽天経済圏の魅力>>>auじぶん銀行のメリットです。
楽天銀行の観点では、口座残高100万円というのはVIPランクになる分水嶺です。資金を分散してしまうと、この恩恵が消滅します。それと引き換えに入手できるauじぶん銀行の恩恵は楽天銀行との優遇金利の差0.1%ですが、数十万円の残高に発生する利息の差は年間でも10-90円程度です。
資金を分散させることで、どちらも中途半端になり、『二兎を追う者は一兎をも得ず』の言葉にある通り、何も得られなくなります。楽天経済圏にいるのであれば、まずは楽天銀行に集中しましょう。
銀行預金残高が100万円以上の場合
楽天銀行を日々の決済口座として安定的に利用しながら、楽天経済圏の恩恵を受けるなら口座に100万円もあれば十分です。それ以上の余剰資金は好きに動かしても不都合はありません。
そして、ここまでくれば、余剰資金をauじぶん銀行に移す検討を始める価値があると考えています。
なぜなら、スマホATMや無料振込回数の強みを持つauじぶん銀行に相応の資金があれば、『送金用』+『現金引き出し用』としてサブ的に活用することで、日常生活の利便性が増すからです。
もちろん残高が増えてくれば、ここに『利息』という経済的な魅力も加わります。
ただし、余剰資金が少ないうちは、「口座を増やすのが面倒臭い」という方は無理にauじぶん銀行を追加する必要はなく、引き続き楽天銀行1本でも良いと思います。
銀行預金残高が300万円以上の場合
迷わず、楽天銀行に加えてauじぶん銀行も開設すべきです。冒頭にご紹介の通り、2022年4月以降、楽天銀行の300万円を超える残高については0.04%しか利息がつきません。
優遇金利0.2%の適用に上限がないauじぶん銀行との差(0.16%)は口座残高が大きくなればなるほど年間の利息額に大きな影響を生みます。
資産運用をしている人であれば、分かると思いますが0.1%というのは複利効果で、長期的には非常に大きな差を生みます。
ネット銀行の開設・管理(スマホ1台で可能)なんて大した手間ではないはないので、貯金金額が大きい人は楽天銀行とauじぶん銀行の2口座併用をおすすめします。
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