円安局面という恩恵はあるものの、2022年4月に金融資産が4,000万円を突破しました。ここに辿り着くまでに『7年』を要しました。その長い道のりのきっかけや、その過程で学んできたことのうち特に資産形成に寄与したと思うことを振り返ろうと思います。
20代は金融資産3,000万円以上になると政府統計上は0%になるようです。実際にゼロではないのでしょうが、20代で金融資産4,000万円以上は存在が極めて限られると思うので、参考になる情報が提供できれば幸いです。

本格的に資産形成に取り組んだきっかけ
橘玲さんのロングベストセラーである『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』を読んだ事が本格的に資産形成に取り組むきっかけになりました。
世の中には一生懸命に働いているのに、経済的に辛い思いをしている人がたくさんいます。そして、個人的にも『良い大学を出て、良い会社に就職する』という世間では憧れの的である特権的地位を必死の思いで掴みとっても、その後の人生を辛そうに生きている大人たちをたくさん見てきました。
日本という先進国で生まれても日々生きるのが精一杯、そんな事があるのだろうか?こんな疑問は社会人1年目当初から持っていました。同時にこのレールの上を進んだ先の終着点も見えた気がして、絶望と焦りの感情を抱いたのを覚えています(サラリーマンにも幸せな人生を歩んでいる人はいるので、今思うとオーバリアクションでしたが)。
そして、世の中をよく観察していると優雅な暮らしぶりを実現している階層が存在することにも気づきました。(十分に社会で一握りの存在のはずの)高学歴エリートサラリーマンとこうした階層の差はどこにあるのかというのが次に解き明かすべき命題になっていたところに出会ったのが『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』でした。
この1冊が、当時の自分には当然で疑うことのなかった『常識』がお金持ちにとっての『非常識』である事を気づかせてくれました。そして、『とにもかくにもお金持ちの常識をまず学ぶ必要がある』という自覚が生まれ、それが考え方や行動を如実に変えていきました。
私の現在までの資産形成の道はここから始まったと言っても過言ではありません。そして、この本は今でも何度も読み返しています。日本の社会保険制度や税金の話など個別具体的な情報は古くなっていますが、考え方の本質は色褪せないからです。
お金持ちの常識をインストールするのに役立った本
私は普通のサラリーマン家庭に育ったので、周囲にお金持ちはいません。なので、お金持ちは想像上の生き物でしかなく、マスメディアが報じる銀座などの都内一等地でブランド品に身を包み、高級車に乗っているようなマダムなどがお金持ちのイメージでした。
そのお金持ちのイメージを壊して再構築してくれたのがトマス・J・スタンリー氏の『となりの億万長者』とロバート・キヨサキ氏の『金持ち父さん貧乏父さん』です。
『となりの億万長者』からは、実際のお金持ちは高級住宅街よりも中間層の居住地域で質素に暮らしている人が多いことを、『金持ち父さん貧乏父さん』からは世間一般の考える高学歴エリートサラリーマンが陥りがちな経済的な成功に関しての錯覚について学びました。
『お金持ち』とはどのような状態でどのような人たちなのかを具体的に把握して、当時の思い込みを修正しました。前提や目的地設定を誤っていてはどんな努力をしても理想に近づく事ができないので資産形成をする上で重要なターニングポイントだったと思います。
金持ちとは結局のところ以下の公式をよく理解・実践できている人なのだと思います。
資産形成=(収入ー支出)+(資産✖️運用利回り)
橘玲さんは、これをお金持ちの方程式と呼んでいます。私もこの公式が資産形成の真理であると考えています。金融資産を築くには、収入よりも少ない支出の範囲で生活をして黒字家計を作ります。そして、その一部を投資に回すことで金融資産の増加速度を早める事ができる。これだけのことです。
(先進国で世界的には高収入の部類に入るにもかかわらず)日本人の多くがお金持ちになれない理由もこの式で説明できます。年功序列で収入が上がるにつれて、プライドや見栄(もしくは”当然”の水準)も大きくなるからです。車は恥ずかしくないものを、時計は役職相応のブランドを、スーツや革靴も一流品をと支出をあげていく人が多いです。これでは収入が増えても家計黒字は大きくなりません。
ここに住宅ローンを組んで実力以上の持ち家や、際限ない子供の教育費などが加われば資産形成は困難を極めるのは想像に難くないです。しかし、日本人の多くは「30代で家を買うのは『常識』だよね。自分の年収ならこれぐらいの住宅ローン金額は『普通』だよ」と世間一般の常識を基準に支出行動を行う人がほとんどです。子供一人当たりの成人するまでの養育費までを細かく考えて、人生設計をする人はごくわずかでしょう。子供の養育費は削るのが難しいので、見栄の部分を本来削るべきなのですが、その事実に気づく事が出来ない(または気づいても我慢ができない)家計ではお金は貯まらないのです。
これが高学歴エリートサラリーマンでも日々生きるのに精一杯で辛そうにしている現象の全体像です。原因がわかれば、適切な手段を講じることが可能です。しかし、本来は疑うことのない『常識』が根本的な原因なので問題を問題と認識するのは非常に難しく、エリートであってもロバート・キヨサキ氏がラット・レースと呼ぶ状態から抜け出す事ができないのです。
金融資産4,000万円の実現に重要だったこと
本記事のメインですが、私が金融資産4,000万円を実現した過程を振り返った時に特に重要だったと感じた考え方や取り組みについてお話ししたいと思います。振り返ってみると、何も特殊なことはなく当たり前のことを当たり前に実行できるかに尽きます。
まずは強固な黒字家計を作る
スポーツの種類に関係なく、アスリートが共通して基礎体力強化に取り組むように、資産形成においても基礎体力の充実が何よりも大切です。収入の範囲内で暮らし、家計黒字をより厚くする過程が資産形成における基礎体力強化です。そして、基礎体力が高い家計は資産運用でも有利に立ち回る事ができます。後述の通り、自分にとって最適なリスクの取り方を考える上での核となるからです。
資産形成=(収入ー支出)+(資産✖️運用利回り)
この式の中で自分で確実に計算できるのは(収入ー支出)の部分だけです。運用利回りは自分の意思や努力に関係なく市場で決まります。一方で、収入はサラリーマンであれば基本的に毎月同じような金額が入ってきます。そして、転職や副業といった自分の意思と努力で高める事が可能です。また、支出についても自分の意思と努力である程度コントロールできるお金の流れです。この確実に計算できる純利益の厚みがどれだけあるかが、つまるところ家計の基礎体力になります。
私は野球観戦が好きで阪神ファンなのですが、JFKというまず点を相手に取られない投手陣が7〜9回を固めていた時代は本当に強かったです。なぜ強かったかと言えば、6回までに1点でもリードしていれば、その試合はまず負けないという計算ができたからです。野球は本来9回3アウトの勝負ですが、この時代の阪神は6回終了時点でリードした試合の勝率は9割を超えていました。この6回までに1点のリードを奪えば勝てるという明確な算段がある事で、『この状況なら三振やゲッツーなどのリスクを伴う長打狙いは必要ない。ランナーを確実に進塁させよう』など場面に応じた適切なリスク判断が可能になったのです。
私は社会人生活の中で一度も収支が赤字になったことはありません。毎月●十万円の貯金が作れるという計算が立っているのが私の資産形成における最大の強みです。このおかげで私は1年後、2年後そして5年後の自分の金融資産を正確に計算する事ができます。そして、この計算を精緻にできているからリスクとリターンのバランスが取れた資産運用の方針を立てる事ができるのです。
家計管理(収支を把握)をしっかりして、計算の立つ純利益を毎月確保しておくことが資産形成の勝率を高める上では最重要です。
資産形成の計画には誤りの余地を残す
確実に上手くいく資産形成の方法なんてものは存在しません。また、収入や家族構成などリスク許容度は人により異なりますし、性格も十人十色であることを考えれば適切な資産形成方法を画一的に説明することは難しいです。
したがって、万人に通用する方法はご紹介できないのですが、全ての人に有益だと私が考えているのは『資産形成の計画には誤りの余地を残す』ということです。
(どんなに確実だと思えても)この世の中に『絶対』はないことを自覚して、その全幅の信頼を寄せる手法が失敗に終わっても再起可能なようにリスク管理を行うことです。具体的には、計画は計画通りにいかないことを前提に誤りの余地を初めから作っておくことです。全知全能の神でもない限り、実際に始めてみたら計画時には考えてもいなかった事が起きたりするのは当然のことです。その度に軌道修正しながらゴールに向かっていくのが資産形成です。軌道修正するためには退路も必要だし、余裕も必要ですね。なので、これらのリソース確保できるような計画であることが重要なのです。
私の場合は『インデックス投資であっても元本割れする』というところまでは計画の誤りの余地として織り込んでいます。投資収入のみに頼って生きるつもりなく、労働市場の中での自分という資産の価値を常に高めておくことで金融市場の想像以上の下落や低迷というリスクに対して備えておこうと思っています。
これらの考え方はモーガン・ハウセル氏の『サイコロジーオブマネー:一生お金に困らない「富」のマインドセット』が詳しいです。
情報収集のメインは読書にする
現代人の情報収集のメインはSNS(Twitter・Instagram)、Youtubeやインターネットだと思います。これは私の考えるお金持ちの『非常識』の一例だと思います。
お金持ちほど情報収集は読書や人脈です。人脈の部分は自分もそれ相応の価値が提供できる人間にならなくては情報収集として有用な繋がりを得ることは難しいので、我々のような一般庶民の参考になるのは『読書』です。
心理学にレイク・ウォビゴン効果という現象があります。人は『他の人と比べると自分は平均以上である』と過信する認知バイアスが認められるという面白い研究結果です。つまり、全体の半分は平均以下になるはずですが、実際には半分より多くの人間が『自分は平均的な人間よりも賢い』と考えているのがこの世の中ということです。
SNSやインターネットは認知バイアスが特に強い情報源です。SNSの呟きやインターネットの書き込みは敷居が低く誰にでもできます。また、誤りを自ら正す自浄能力もありません。一方で、本は出版コストが発生しますし、出版社の評判にも関わるので、ある程度の学歴と職務経験のある大人が編集者として何重にもチェックして世に送り出すので情報の質がSNS等と比べて格段に担保されます。そして、内容が間違えていたり、価値が低い書籍は市場淘汰されます。このプロセスを経て価値が長年にわたり認められた著作だけが増版や重版を重ねて読み継がれていくのです。本は自浄能力がある情報媒体です。
そして、資産形成に関する情報収集はこの特性から本を基本にすべきです。
なぜなら、お金は人生に直結するセンシティブな話題のため会話をする相手(情報源)が限られます。そのため間違いを訂正される機会が限定的であるほか、『長期投資』という言葉を曲解して不都合な事実や問題は先送りできるので認知バイアスの盲点が見過ごされ、思い込みが強化されやすい条件が揃っています。
私は認知バイアスが怖いので、投資に関しては読書を基本としています。世界に目を向ければ自分よりも優秀な人間は数多いわけで、有識者からみても間違いないものに投資することで間違うリスクを軽減できると考えています。そして、学びの段階では有識者を自分で判別するのは難しいので、古典的名著を複数読むようにしています。本当に重要なポイントは色々な有識者が言及しているものです。
古典的名著というのは長年に渡り有識者に評価されてきた結果、現代でも読まれているわけです。この歴史の試練に耐え抜いたという客観的な事実が信頼性の担保です。また、古典的名著は2回、3回と繰り返し読んでも毎回異なる気づきが得られる良書ばかりです。これらの本はほとんどが数千円で購入可能です。スタート地点を誤らないように書籍代はケチらないようにしています(スタート地点を間違えたら、その後の努力が全て無駄になるからです)。
<代表的な古典的名著の例>
①ウォール街のランダムウォーカー
②敗者のゲーム
③株式投資の未来
インターネットの登場によって情報獲得の敷居は著しく下がりました。私はこれからは情報については取捨選別の能力がより重要だと考えています。そして、情報に触れるきっかけとしてインターネットは有用と思いますが、情報の質に関しては『本』にまだまだ軍配が上がると思います。
日本における資産形成は比較的新しい分野なので、日本語のソースには成熟した情報が少ないのが現状であり、日本で出版される新書の多くが、米国で長年読み継がれている古典の焼き直しです。これらの古典を自ら読んで資産形成のエッセンスを体得し、日本国内の社会制度や投資環境に合わせて取り入れていく事ができる人は遅かれ早かれアッパーマス層(金融資産3,000万円)は到達すると思います。私の資産形成における知識のベースは本記事内でご紹介した書籍で大部分はカバーされています。
私は親から金融資産を引き継いだ訳でもなく、起業で一発を当てた訳でもありません。普通のサラリーマンとして得た給与の範囲内で生活を行い、積み上げた純利益を資産運用に回すことで20代で金融資産4,000万円を築きました。そして、その方法は一部の特権階級だけが使える裏技のようなものではなく、誰でも購入できる古典的名著の中で語られているものばかりです。つまり、多くの日本人にとって再現性のある資産形成方法だと思っています。(情報発信が好きな性分なので)今後も趣味の範囲で日々の資産形成の取り組みや学んだことを共有していきたいと思います。

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