<本記事の要旨>
【マーケット関連】
✔︎米7月CPIは直近高値(+9.1%)から下落(+8.5%)
✔︎ジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演
✔︎(↑その後)NASDAQは7日連続の下落
✔︎欧州の物価上昇が深刻
【資産運用状況】
運用残高:$148,670→$144,586(▲2.8%)
運用益:$19,364→$15,279(▲21%)
さて、8月末時点の資産運用状況の報告を行います。いつも通り、前半部分は現在のマーケットの注目トピックを簡単にまとめ、後半で私のポートフォリオがどのような影響を受けているかについて詳細を見ていきます。なお、私のはVYM、HDV、SPYD、SCHDの米国高配当ETFを海外証券口座(運用残高は約1,900万円)で運用しており、そのほか楽天証券でインデックスファンドの積立投資を実施中です。
それでは、今回もマーケットの振り返りと私のポートフォリオの状況を綴っていきたいと思います。
2022年8月の株式市場の振り返り
20222年8月の株式市場は前半と後半で両極端な値動きを見せた月でした。月の前半部分はサマーラリーとも呼べる上げ相場になりました。S&P500は6月に足元での底値をつけておりますが、8月半ば時点では同底値から+17%も上昇していました。この背景ですが、7月の米国消費者物価指数(CPI)が先月の数字より改善しており、アナリスト予測よりも良かったことを受けて投資家が(1)インフレが鈍化しているのではないか(2)FRBによる利上げペースが落ちるのではないか(また早期の金融緩和が期待できるのではないか)とマーケットの見通しをより楽観的に修正したからというのが大方の見方でした。
7月の米国消費者物価指数(CPI)は事前予測+8.7%に対して結果+8.5%という内容でした。先月の+9.1%よりは改善しているという結果でしたね。一方で、これは相対的に良かったということで+8.5%は絶対的にはまだかなり高水準で予断は許さないとい状況です。

そして、順調な株価回復の流れに待ったをかけたのが8月26日のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演でした。上述のとおり、市場関係者は利上げペースの鈍化や2023年早々にも利下げに転換する(英語ではよくPivotという表現をされています)と楽観的な反応を見せ始めていた中での講演でした。この講演の中でパウエル議長は、FRBの2%台にインフレを落ち着かせるという目標に鑑みれば8.5%というのは依然として高い数字でインフレが鈍化している(利上げペース落とせる)という確信は全く得られていないと楽観的な市場に釘を刺しました。これを受けて株式市場は一転して下げに転じました。中でもNASDAQ100は前日比▲4.1%と急落と言ってもよい内容でした。その後、結局NASDAQは7営業日連続での下げという結果になりました(出典:NHK)。
このように現在の相場はFRBの金融引き締め動向(利上げ&QT)に大きく左右される展開となっています。FRBが最終的にどの程度引締めを行うかは米国内のインフレ動向次第であります。したがって、米国中心に物価動向を注視していく姿勢が現在は大切だと感じます。米国も深刻だと感じていましたが、欧州はそれよりも危機的な水準にあると感じます。
ここではドイツと英国の現状に触れておきます。両国では光熱費を中心に前年比で急激な支払料金の高騰が起きており国民の間で不安と不満の兆しが見えています。両国政府は先手で対応するために相次いでインフレ対応策を打ち出しています。ドイツは家計負担の削減に650億ユーロ(約9兆円)の予算を計上することを決めました(出典:BBC)。このほかにもドイツはすでにエネルギー危機対応関連で約1,000億ユーロ(約14兆円)、その前にはコロナ危機対応で約3,000億ユーロ(約42兆円)を計上しており、これだけでも総額65兆円規模の支出になります。また、英国はトラス新首相は迅速なインフレ危機対応を公に約束しており、1,000億ポンド(約16兆円)の政府借入を行い光熱費が現行水準で維持できるように補助金を入れる方向で検討が進んでいます。
これらの支出はGDP比で10%以内に収まる水準ですので、単発である分には両国の財務健全性に大きな影響はないかと思います。一方で、インフレ対策という大義名分があるとはいえ、財政出動をしてお金をばら撒いていることには変わりないので、将来にツケを回したり、趣旨に反して高インフレを定着させる本末転倒な結果になる懸念は完全には払拭できないと思います(物価上昇の根本的原因を取り除けない場合は恒久的に補助金入れるの?そして、根本的原因は欧州の努力で解決できる話だったけ?というのがここでいう懸念)。メルケル首相が去ったドイツは不安定な政権運営が続いていますし、英国のトラス新政権も基盤は盤石といえないでしょう。今回のインフレ対策は政治的に実施せざるを得なかった(とにかくやるという結果ありき)での判断だと思うので、内容が本当にバランスの取れたものであるのか疑問は尽きません。いずれにせよ、確実に言えるのは欧州は非常に難しい舵取りが求められているということです。
また、気になるのはこうした欧州の足元を見てか、イタリア国債への空売りが急増しています。欧州中央銀行(ECB)がイタリア国債を買い支えているのですが、その利回りはすでにリスクに見合わないとして個人投資家は誰も買わないような状況であると報じられています(出典:日経新聞)。
総括すると、現在の株式相場はあまりにダウンサイドリスクが大きいと個人的には考えています。このような状況では『歴史的に中長期的には右肩上がりの成長実績があるインデックスファンドの定期積立を淡々と実行し、あとは余計なことはしない。』というのがベストなのではないかと思います(詳細はインデックスファンドの運用状況にて)。
米国高配当ETFの運用状況

私はこの口座で米国高配当ETF(VYM・HDV・SPYD・SCHD)を管理しています。8月は冒頭のとおり、ダウンサイドリスクが高まっていると感じていたので7月同様に買い増しは行いませんでした。そして、私のポートフォリオもジャクソンホール会議の影響を受けて8月は散々でしたね。7月は少し回復を見せたのですが、8月は回復分をほぼ吐き出す形で含み益が減少しています。一喜一憂しても仕方ないので、キャッシュポジションを高めながら機会を伺いたいと思います。
なお、NASDAQやS&P500が年初来で20%を超える下落をする中でも、米国高配当ETFへのダメージは比較的小さいので記録用に以下残しておきます。HDVにおいては年初来でプラスリターンを確保しています。HDVは財務健全性を重視した銘柄採用を行っているのが特徴で、それが功を奏しているようです(詳細はこちら)。
インデックスファンドの運用状況

私は楽天証券で毎月10万円をeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)に投資しています。このような低コストの優良なインデックスファンドに投資できるなんて本当に良い時代です。本場である米国でも世界株式市場に丸ごと投資する投資信託をバンガード社が展開していますが、そのファンドの経費率は0.1%です。eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の費用は0.1144%ですからほとんど差がありません。日本にいながら米国市民と同じような投資機会が持てるようになったのは、つい最近の話です。私は2016年から投資をしていますが、低コストで全世界に投資するにはいくつかのファンドを自分で組み合わせるしかありませんでした。
上述のとおり、私は株式市場のダウンサイドリスクを懸念して米国高配当ETFは購入を一時見合わせていますが、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の毎月積立は方針を変更せずに継続しています。その理由は以下ツイートしたとおり、インデックスファンドの+5-7%の期待リターンは大暴落に巻き込まれることも想定の範囲内だからです。
今の相場で動揺している方は米国インデックスファンドをコアにすべき。インデックスファンドは市場リスクに特化した投資方法ですが、米国200年の歴史において米国市場リスクは20年以上の運用を前提にいつ始めても期待値はプラスでした。荒れ模様でも、それが市場リスクである限り恐るに足らずです。
— ごんぎつ(米国投資7年生) (@gonfox21) September 8, 2022
上記ツイートの哲学に従うならば、インデックスファンドの期待リターンを確保するために大切なのは、タイミングを見計らい安値で大量に買い付けることではなく投資資金を可能な限り長期間にわたり市場に置いておくことです。このように下落相場でも自信を持って継続保有できるロジカルな根拠を持つのが全世界や米国など成長市場の恩恵をダイレクトに反映できるインデックスファンドです。
上昇相場では含み益があらゆる投資を正当化してくれます。長期投資において問題になるのは下落相場で含み損を抱えた時に、自分の投資を正当化できるかなのです。こうした観点から、私は資産形成の手段としてインデックス投資に全幅の信頼を寄せています。

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