【SPYD構成銘柄】シェブロン(CVX)の銘柄分析〜石油王ロックフェラーに源流を持つ6大メジャーの一角
会社名 | シェブロン(Chevron Corporation) |
ティッカー | CVX |
市場 | ニューヨーク証券取引所(S&P500銘柄) |
セクター | 総合石油 |
備考 | SPYD構成銘柄(2020年5月時点)連続増配年数33年 |
出典:Yahoo Finance |

【CVX】企業情報
シェブロン(Chevron Corporation)は石油王ロックフェラーが設立したスタンダードオイル社(19世紀の米国市場をほぼ独占した元祖石油メジャー)に源流を持つ企業です。
第二次世界大戦から1970年代は権勢を誇る国際石油資本セブンシスターズの一角として世界の石油市場を支配しました。
また、時価総額世界一の企業である国営石油会社サウジアラムコの設立に携わった過去も持っています。
現在はスーパーメジャー6社の一角を占める総合石油事業会社です。
石油販売量ではスーパーメジャーの中で5番手ですが、後述の通り財務健全性に特に優れた石油メジャー銘柄となっております。
そしてSPYD選好投資家としては連続増配年数33年が目を引く企業です。
2019年度売上高(単位:百万米ドル) | ||
1 | Royal Dutch Shell (英・蘭) | $344,877 |
2 | BP (英) | $282,616 |
3 | Exxon Mobil (米) | $264,938 |
4 | Total (仏) | $176,249 |
5 | Chevron (米) | $139,865 |
6 | ConocoPhillips (米) | $36,670 |
出典:Royal Dutch Shell, BP, Exxon Mobil, Total, Chevron, ConocoPhillips |
注目ポイント
2019年に米国は45年ぶりに石油生産量で世界一に返り咲きました。
世界一奪取の原動力になったのは最新の掘削技術で採掘可能になったシェールオイルです。
米国原油生産量の約7割(2012年時点では3割程度)をシェールオイルが占めるまでにその生産量は急拡大しています。
シェブロンも米国内での石油事業はシェールオイル生産が中心となっています。
そして、抑えておきたいポイントがシェールオイルの採掘コストです。
技術革新が進んだとはいえ、サウジアラビアやロシアの石油に比べると地中奥深くの硬い岩盤から抽出するシェールオイルはコスト面ではどうしても勝てないのです。
コスト優位性はロシア(40ドル/バレル)>サウジアラビア(50ドル/バレル)米国シェールオイル(55〜60ドル/バレル)程度だと言われています。
従い、石油価格が下落すると一番最初に苦しくなるのがシェールオイル生産と言えます。
2019年は低迷する石油価格が原因で、シェブロンはパーミアン鉱区で実施するシェールオイル事業で実際に減損計上を行なっています。
【CVX】収益構造


シェブロン は上流(石油生産・天然ガス生産)から下流(石油精製・石油加工品の販売)までバリューチェーンの全てをカバーする総合事業を手がけています。
上流部門は石油価格の上昇が収益に直結します。一方で、下流部門は石油が原料(コスト)になるので石油価格が低下すると収益が改善する傾向にあります。
シェブロンの場合は他の石油メジャー同様に上流部門が収益の大黒柱です。
つまり、(当然と言えば当然ですが)石油価格が上がるとシェブロン の業績もUPします。
それでは数字で確認しましょう。
収益高と収益割合の関係に注目すると、上流部門の利益比率が高い2018年の収益高が直近3カ年で最も良くなっています。
そして、(石油価格の低下に伴い)上流部門の利益比率が大きく減少した2019年の収益高は最低を記録しています。
2019年は前述の通り米国内でのシェールオイル事業で減損が発生したことが響きました。
【CVX】石油・天然ガスの生産地比率

石油生産はシェールオイル中心の米国事業がトップで36%を占めますが、生産地域はアジア・オーストラリア・アフリカにも広がっておりバランスが取れています。

天然ガス生産についてはアジアとオーストラリアで全体の7割を占める形になっています。
石油価格に事業収益が左右されることは変わりませんが、石油権益は常に国家接収のリスクも念頭にリスクヘッジしなければいけないので、生産地域が広く分散されているのは長所です。
【CVX】売上高・EBIT・純利益

シェブロン の売上高および利益水準の推移は見事なまでに石油価格に連動しています。
2009年に売上高が急減したのは、リーマンショックに伴う石油価格の暴落の影響です。
その後に、資源ブームが到来し石油・鉱物資源価格が軒並み上昇した2010年代前半は大きく持ち直しています。
赤字計上をした2016年はチャイナショックが襲った年です。
中国経済の減速が鮮明(=石油需要の減少)になったことや、供給面では米国のイラン経済制裁の解除が決まりイラン原油が復活するとの見立てが強まったことで、石油価格が大きく下落低迷しました。
2019年は一般ニュースでも注目集めた石油関係国の足並み不揃い(OPEC VS ロシア)による過剰供給に伴う石油価格低迷の影響でシェブロン の売上高も減少しています。
こうしてみると、『シェブロンの業績は石油価格次第』というのが良く分かりますね。
【CVX】キャッシュフロー

2013年〜2016年は設備投資に多額の資金を投入したため、フリーキャッシュフローがマイナスになっていますが、常に営業CF黒字を保っています。
加えて、営業CFマージンは概ね15%以上(直近は18%〜19%)をキープしており、非常に効率的にキャッシュを創出できるビジネスモデルを持っていることが数字にも表れています。
シェブロンは同業他社と比べても競争力が高い事業構造と言えます。
【CVX】財務健全性
単位:百万米ドル | 流動資産 | 流動負債 | 流動比率 |
2015 | 34,430 | 25,467 | 135% |
2016 | 29,619 | 31,785 | 93% |
2017 | 28,560 | 27,737 | 103% |
2018 | 34,021 | 27,171 | 125% |
2019 | 28,329 | 26,530 | 107% |
出典:各年アニュアルレポート |
理想的な水準が150%と言われる流動比率ですが、概ね100%以上を維持しており財務健全性は良好に保たれています。

債務償還能力を示すEBITDA有利子負債比率は2016年に上昇しましたが、直近は0.76倍と非常に良好な水準を保っています。
これは『事業収益1年分で全額返済出来る水準に債務比率が収まっている』ことを意味しており、シェブロンの財務健全性はスーパーメジャーの中でトップです。
S&Pは高格付(AA)維持の目安の一つとしてEBITDA有利子負債比率が1.5倍以内を維持できるかに着目しているようですが、現状は比較的余裕である水準です。
【CVX】配当金実績

冒頭でもご案内の通り、シェブロン(CVX)は連続配当年数33年の配当貴族銘柄です。
本日時点(2020年5月15日)の配当利回りは5.66%に達している高配当銘柄でもあります。
シェブロンの株主重視の姿勢と配当金へのこだわりは増配年数からも伝わってきますが、配当性向も踏まえるとより顕著です。
配当性向は2015年は175%に達しても増配をしました(利益よりも多額の配当金を投資家に支払ったことになります)。
2016年は何と赤字転落した年にも関わらず増配をしています(グラフの0%はバグで赤字なので計測不能です)。
配当は株主への利益還元が原則です。
十分な利益が出ていないのにも関わらず還元を実施するほどにシェブロンは株主重視の姿勢が企業文化として根付いているということです。
2019年も厳しい業績でしたが、結局増配しましたね。ただ、少し心配なのが配当性向的には限界を超えている点です。
原油相場の先行きが非常に不透明な中で、手元現金を食いつぶすだけの連続配当は早晩無理が来ると思います。
Royal Dutch Shell(英)も80年振りに減配を決めたことですし、シェブロンの財務健全性はともかく配当金の観点からは今後の原油相場に要注意する必要がありそうす。
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