【GILD】ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)SPYD関連銘柄分析〜売上2兆円のメガファーマー〜
カリフォルニアを拠点とするバイオベンチャーが、29歳の米国人医師の手によって1987年に設立されました。
この1987年生まれのベンチャー企業が、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)であり、2014年以降は世界最大のバイオ医薬品メーカーになっています。。
米国とヨーロッパがギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の収益基盤なので、多くの日本人に馴染みがない企業だと思います。
しかし、日本人の間でも広く知られているインフルエンザ治療薬(タミフル)を開発したのがギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)です。
最近ではコロナ関連治療薬で注目を集めましたが、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の主要医薬品はタミフルでもコロナ治療薬でもないので、本記事でその全貌を明らかにしたいと思います。
企業情報
会社名 | ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences) |
ティッカー | GILD |
市場 | ニューヨーク証券取引所(S&P500)銘柄 |
セクター | ヘルスケア(業種:バイオ医薬品メーカー) |
備考 | SPYD構成銘柄 2015年に配当開始。 |
注目ポイント(コロナウィルス治療薬を開発)
ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)がエボラ出血熱治療薬として研究開発を行う中でコロナウィルスへの効果も確認されたとして、厚生労働省が異例のスピードで特例承認したレムデシビル (Remdesivir)が大変注目を集めました。
現在は127カ国への展開を目指し、インドおよびパキスタンの製薬企業5社と製造契約を取り交わし供給能力の強化を急いでいます。
しかし、世界保健機構(WHO)のパンデミック宣言が解除されるまでは、レムデシビル (Remdesivir)関連のロイヤルティーは請求せず、世界各国へ無償提供するとの方針を取っています。
従い、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の収益に直結する話ではないです。
また、パンデミックが収束してライセンス料の請求が開始したとしても、レムデシビル (Remdesivir)は高価格帯の医薬品にはなり得ないので、大きな収益源にはならないとの見方がアナリストの間で体勢を占めています。
【GILD】収益構造

ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)は、2014年に自社バイオ医薬品であるHarvonyとSovaldiがC型肝炎治療薬として承認されたことで自社の収益構造を変化させるほどの莫大な利益をあげます。
開発翌年にはこの新薬で驚異の200億ドル(約2兆1千億円)の売上を計上しています。
承認当時は競合となる医薬品がなく、高額な価格設定で市場を独占できたことが背景です。
この新薬なんと1錠で12万円以上するらしいです。
治療期間は最短でも8週間にわたるようで、合計金額は1患者で670〜2,000万円にもなる大変高い(儲かる)医薬品だったようです。
潮目が変わるのが2016年以降で、Merk社とAbbvie社がC型肝炎治療薬の分野で承認を獲得します。
とりわけHarvonyの約2分の1の価格帯であるAbbvie社の新薬が2017年に市場参入すると、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)のシェアは確実に縮小しました。
さらに皮肉だったのが、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)のC型肝炎治療薬は非常に優秀で患者の治癒率も非常に高く、医薬品を供給する患者が完治と共に先細りしたのです。
結果、小さくなる市場で価格競争を行う羽目になり、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の売上は激減します。

2015年には売上の60%を占めていたC型肝炎治療薬は2019年には14%まで落ち込んでいます。
反転するように新薬開発に成功し、従来からの強みでもあるHIV治療薬からの売上比率が高くなっています。
しかし、独占市場でのC型肝炎治療の収益高は凄まじかったので、HIV治療薬の収益の伸びも減少した売上を穴埋めをするまでには至っていません。
この穴埋めが出来る収益源の確立が課題と言えるでしょう。
【GILD】売上高・EBIT・純利益

ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の売上は2012年時点でも97億ドル(1兆円超え)とかなりの規模ですが、2014年以降に前述の新薬承認の影響でさらに爆発しています。
収益のピークを迎えていた2015年(C型肝炎分野での競合参入前)には売上が326億ドル(約3兆5千億円)に達し、しかも利益率は驚異の約70%を占めました。
その後、C型肝炎治療薬の売上不振に伴い利益率も急減していますが、27%というのは十分に素晴らしい収益率です。
少し気になるのは、C型肝炎治療薬からの収益が大きく減少した今、収益をHIV治療薬に依存している点ですね。
C型肝炎治療薬で経験したこと(競合参入に伴う売上激減)がHIV治療薬でも起きる可能性を、医薬品の専門家ではない筆者は判断できないので、そう感じるのかもしれません。
後述の通り、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)は潤沢なキャッシュを武器にM&Aも通じてパイプライン(将来の承認医薬品候補)も拡充しているので杞憂かもしれませんけどね。
【GILD】キャッシュフロー

営業CFマージンは全体として40%以上も確保できており驚異的な水準です。
キャッシュ創出能力においてもギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)は凄まじく優秀であると言えます。
2017年にフリーキャッシュフローがマイナスに転じたのはガン領域細胞治療薬を製品ポートフォリオに加えるためKite Pharma社を119億ドル(約1兆3千億円)で買収したためです。
これまで抗ウィルス医薬品を主戦場としていたギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)からすると新領域への拡大になります。
高単価の医薬品で構成される製品ポートフォリオに基づく潤沢なキャッシュフローを武器に巨額M&Aで事業拡大を行えるのがこの企業の強みです。
新たにポートフォリオに追加したガン領域細胞治療薬からの収益も順調に成長しています。
【GILD】財務健全性

前述のC型肝炎治療薬の売上減により、EBITDA有利子負債率も4.0倍まで悪化しています。
普通の企業であればEBITDA有利子負債率4.0倍は懸念される水準です。
しかし、この企業はキャッシュ創出能力に大変優れることに加え、潤沢なキャッシュ(約1兆2千億円)を手元に持っているので財務健全性は非常に強固な状態となっています。

足許では流動負債に対して3倍もの流動資産を持っており、資金繰りが苦しくなる可能性は限りなく低いです。
ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)は1兆円超えの現金に加えて、すぐに現金化可能な有価証券(米国債や社債)も1兆円以上持っています。
日本だと国債を保有しているのは銀行や保険会社のイメージが強いですが、医薬品メーカーでありながら多額の債券も保有しているのは面白いですね。
2018年には実際に一部を売却して、多額の投資キャッシュフロー黒字を計上しています。
財務健全性に死角なし、というのが筆者の印象です。
【GILD】配当金実績

ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)は若く高い成長力が魅力の企業で、配当を出さずキャピタルゲインで投資家に報いるタイプの企業でした。
現在も成長力に陰りがある訳ではないですが、2015年から配当を開始し、現在(2020年5月)まで連続増配を続けています。
増配率は毎年10%以上をキープしている銘柄ですが、配当の歴史がとても短いので、高配当株投資に最適な右肩がりの配当曲線を描くかは今後の注目ポイントでしょう。
現在の配当利回りは3.57%程度となっています。
筆者はSPYDを通じて本銘柄を保有しています。
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