日本で有名な米国高配当株ETFといえば、SPYD・VYM・HDVですが、米国ではSCHDという銘柄が人気です。資産残高は278億ドル(約3兆円)を集めており、これはVYMの383億ドルには劣後しますが、SPYDの47億ドル及びHDVの72億ドルを凌駕しています。
つまり、米国投資家の間ではSPYDやHDVよりもSCHDの方が評価が高いのです。
これだけの実績を持つSCHDですが、日本の個人投資家の間で知名度が低いのは何故でしょうか?
実は残念な理由として、日本証券会社3社(SBI証券・楽天証券・マネックス証券)で取り扱いがないのです。
しかし、この点さえクリア出来る人には魅力のあるETFだと思うので、気合を入れて解説します!
基礎概要(株価・配当金・経費率)
運用会社 | チャールズ・シュワブ社 |
株価 | $76.13 |
年間配当金(2020年実績) | $2.028 |
平均配当利回り(過去10年間) | 3.02%(終値ベース) |
配当利回り(2021年9月現在) | 2.89% |
設定来トータルリターン | 294.1%(年平均+29.4%) |
最大下落率 | ▲33.37% |
銘柄数 | 102 |
経費率 | 0.06% |
資産残高 | 278億ドル |
設定日 | 2011年10月 |
ベンチマーク | Dow Jones U.S. Dividend 100 Index |
上位構成銘柄
SCHDは102銘柄に分散投資していますが、ポートフォリオの42%を占める上位10銘柄の影響が強い内容となっております(詳しいポートフォリオの構成ルールについてはこちらで解説しています)。
この上位10銘柄はまさにSCHDの特徴を象徴していますが、好財務の連続増配銘柄という共通点を持っています。配当金を投資ベンチマークとする個人投資家にとって有力な選択肢になるでしょう。
保有銘柄 | 保有割合 | S&P格付 | 連続増配年数 |
Pfizer | 4.50% | A+ | 12年 |
Home Depot | 4.39% | A | 11年 |
Cisco Systems | 4.32% | AA- | 10年 |
Broadcom | 4.32% | BBB- | 10年 |
PepsiCo | 4.29% | A+ | 49年 |
BlackRock | 4.23% | AA- | 11年 |
Texas Instruments | 4.18% | A+ | 18年 |
Coca Cola | 4.06% | A+ | 59年 |
Merck | 3.97% | AA- | 10年 |
Verizon Communications | 3.85% | BBB+ | 17年 |
セクター比率
2021年9月時点のSCHDのセクター構成比率は次のようになっています。上位3セクターで50%以上を占める形となっています。高配当株ETFには珍しく情報技術セクターが上位に来ているのが特徴です。SPYDやHDVでは構成比率の上位を占めるエネルギーセクターの比率が一番小さいのも目立ちます。
セクター | 構成比率 | 代表銘柄 |
金融 | 21.38% | BlackRock |
情報技術 | 20.52% | Qualcomm |
資本財・サービス | 14.05% | 3M |
生活必需品 | 14.04% | Coca Cola, PepSico, Altria |
ヘルスケア | 12.62% | Pfizer, Merck |
一般消費材 | 6.83% | – |
通信 | 4.96% | Verizon Communications |
素材 | 3.74% | Amcor plc |
エネルギー | 1.87% | Valero Energy |

最大下落率(コロナショック)
SCHDの最大下落率は2020年3月のコロナショック時に記録した▲33.37%になります。この数字を他の配当株ETF(SPYD・VYM・HDV・VIG)のコロナショック時下落幅と比較すると低い方から見てVIGに次ぐ位置にランクします。つまり、米国高配当株ETFの中では最も優れた下落耐性を見せました。
VIG:▲31.7%
SCHD:▲33.4%
VYM:▲35.2%
HDV:▲37.0%
SPYD:▲46.4%
トータルリターン
SCHDは2011年の設定から約10年で株価は3倍に成長しました。株式の平均期待リターンである5%を基準にすると約14年で2倍になれば合格点ですから、SCHDは株価成長も期待出来るETFとなります。
米国高配当株ETF(SPYD・VYM・HDV)との比較
VYM:72.5%
SPYD:49.0%
HDV:42.4%
SPYDが2016年6月と一番若いので、2016年6月から2021年9月までのトータルリターン(配当再投資)を比較しました。成績順にSCHD→VYM→SPYD→HDVと続きます。
線グラフが示す通り、SCHDはトータルリターンでSPYD・VYM・HDVを大きく離して首位に立っています。

米国増配株ETF(VIG)との比較
VIG:311.1%
2011年10月から2021年9月までのトータルリターンを比較しています。通常期に強いのがVIGで、暴落回復局面で強いのがSCHDという特徴が出ています。
年平均成長率にならすと、SCHDの14.9%に対してVIGは15.3%と僅かながらVIGに軍配が上がる結果となりました。しかしながら、キャピタルゲインに強みを持つ増配系ETFのVIGに対して高配当系でありながらトータルリターンでも肉薄するSCHDは個人的に高く評価出来ると考えています。

年間配当金・増配率推移
SCHDは設定以来一度も減配したことがなく、10年連続で増配しています。日本で米国配当系銘柄として知られているSPYD・VYM・HDV・VIGで同期間中に1度も減配していないのはVYM(2021年は減配着地の危機)のみです。このことからもSCHDは増配傾向でも大変優れていることが分かります。
年間配当金はキレイな右肩上がりを描いています(2021年は第二四半期終了時点)。

そして、SCHDの最大の魅力は何と言っても増配率です。他の米国配当株ETFと比較しても高い増配率実績を誇ります。平均増配率は12%を超えており、6年で配当利回りが2倍になる水準です。
SCHD | VYM | VIG | |
2013 | 11.6% | 9.8% | ▲1.6% |
2014 | 15.7% | 9.1% | 14.2% |
2015 | 9.7% | 12.6% | 14.8% |
2016 | 9.7% | 2.7% | 0.4% |
2017 | 7.0% | 8.8% | 5.1% |
2018 | 7.0% | 10.3% | 6.2% |
2019 | 19.8% | 7.3% | 4.7% |
2020 | 17.6% | 2.3% | 7.6% |
平均増配率 | 12.3% | 7.9% | 6.6% |
配当利回り推移
最低: 2.47%
平均: 3.02%
SCHDの配当利回りはコロナショックの暴落局面で過去最高の5.13%(終値ベース)を記録しました。また、これまでに記録した最低利回りは2.47%となっています。
設定以来の平均利回りは約3.0%となっていますが、通常時期は2.8%〜3.0%の間で推移しています。コロナショック発生前の2019年末までの間で平均利回りを計算すると2.9%程度となります。
個人的な感想として、(調整局面を除けば)配当利回りはバラつきが少なく安定していると思いました。

SCHDの買い時
SCHDの買い時ですが、配当利回りを目安に買い時を考えると、以下3つの購入ポイントで検討するのが一案と思われます。
一方で、SCHDは調整局面でもない限り配当利回りにバラつきが少なく、増配率も高いので、買い場についてあまり神経質になる必要はないように思われます(ご紹介するポイントも0.1%きざみですし)。
3%を超えた時
配当利回り3.0%を超える場面は、通常時期ではそう多くないので、積極的な購入を検討したいラインであると個人的には考えています。
現在の増配率を維持できるのであれば、6年後には配当利回り6%超えが期待できるエントリーポイントになります(皮算用ですが、12年後には12%と超高配当化します)。
2.9%を超えた時
コロナショックなどの異常期を除けば、SCHDの配当利回りは平均して2.9%程度です。この水準であれば、個人的に気持ち良く購入出来ます。
2.8%を超えた時
配当利回り推移を眺めると、2.8%以上で購入出来るチャンスは比較的多いので、これより下の水準であれば購入タイミングを少し待っても良いかなと思います。
逆に言えば、配当利回りが2.8%を超えてきたら個人的には購入を始めようかなと思う頃合いです。
チャールズ・シュワブ社とは
チャールズ・シュワブ社は1971年にサンフランシスコで創業されたオンラインを中心とする証券会社になります。日本人には馴染みが薄いかもしれませんが、顧客資産残高は2021年6月末時点で7兆5,748億米ドル(831兆円)を超える巨大証券会社です。
日本最大の証券会社は野村証券で、その顧客資産残高は2021年6月末時点で127兆円程度なので、野村証券の6.5倍の運用資産を持つチャールズ・シュワブ社の巨大さが分かると思います。
チャールズ・シュワブ社は19種類のETFを運用しており、その経費率は0.03%〜0.39%と激安であり、長期保有に向く低コストの商品ラインナップが特徴となっています。
コメント