米国株ETF(パッシブ型)が連動するベンチマークについて深く掘り下げていく勉強コーナーもVYM、SPYD、HDVに続いて第4回目となりました。今回はSCHDについて取り上げたいと思います。SCHDは創業者の名前をそのまま冠するチャールズ・シュワブ社が展開する米国高配当ETFになります。
チャールズ・シュワブ社は日本での知名度は低いですが、顧客に低コストの投資機会を提供するという哲学を持っており米国ではバンガード社のようにコアな個人投資家ファンが数多くいます。SCHDの概要を簡単に述べると、『高配当✖️高増配✖️高成長の三拍子揃った低コストな凄いやつ』です。トータルリターンと増配率でVYMをしのぐ実績を持っており、配当利回りも足元ではSCHD>VYMになっています。経費率は0.06%とVYMに並んでおり、チャールズ・シュワブの明確なライバル意識を感じます。
今回は私が最も注目している銘柄でもあるSCHDのベンチマークについて学びます!
SCHDは指数開発の元祖とも呼べる『ダウ・ジョーンズ』ブランドで展開されているDow Jones U.S. Dividend 100 Indexをベンチマークにしています。
ダウ・ジョーンズとは
ダウ・ジョーンズといえば、1884年から続く米国最古の株価指数である『ダウ平均(ダウジョーンズ工業株価平均)』が有名です。なので投資界隈ではダウジョーンズが株価指数の同義語的に使用される場面もありますが、ダウジョーンズは米国の有名経済新聞である『ウォールストリート・ジャーナル』を中心に経済関連のニュースコンテンツを発信する大手メディア企業です。
日本でも日経新聞が日経平均という日本株価指数を展開しているのに似ていますね(むしろダウ平均にインスパイアされた日経新聞が真似していると見るべきでしょう)。ダウジョーンズ社はチャールズ・ダウ、エドワード・ジョーンズ、チャールズ・バーグドレッサーの3人が1882年にウォール街に設立した会社です。ダウ・ジョーンズ社の名前はこの創業者達に由来している企業名なのですね。チャールズ・ダウはテクニカル分析の世界でも第一人者なので、その道でも有名です。
そして、今日ではダウ平均を含めて、そのブランドを冠する株価指数はS&Pグローバルとシカゴ・マーカンタイル取引所グループ(CME Group)の合弁であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社により開発または算出されています。同社はSPYDがベンチマークとするインデックスの提供も行っていますね。
Dow Jones U.S. Dividend 100 Indexとは
Dow Jones Dividend 100 Indexは開発元のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の紹介文には、『コンスタントな配当金支払い実績を有し、金融指標から競合銘柄に対してファンダメンタルに優位性が認められる米国高配当株のパフォーマンスを計測するよう設計された指数』とあります。
さて、具体的な内容について掘り下げて見ていきましょう。Dow Jones U.S Dividend 100を構成する銘柄候補となるための条件は以下の通りです。 このスクリーニングによる「ふるい」にかけられて残った銘柄から”エリート”を絞り込むのです。
①連続増配年数が10年以上
②浮動株の時価総額が5億ドル以上
③一日の平均取引量が200万ドル以上
*浮動株とは市場で売買可能な株

この「ふるい」もかなり厳しいですよね。実力企業がひしめく米国市場と言えども、残れる企業がどれだけあるのかなと感じます。この事前テストとも呼べるスクリーニングですが、このプロセスの一部を切り取っても日本を含めて他の地域で同じようなETFを作るのは困難と感じます(それだけ米国株式市場の厚みが群を抜いている)。ここからさらに競わされて生き残る銘柄はかなり期待ができそうです………
100銘柄の枠に入るためにはファンダメンタルの強さが求められる
この指数を構成する銘柄数は100と決まっているので、指数構成銘柄入りを果たすためには絶対的に優秀なだけではなく、その仲間内でもさらに相対的にも優秀であることを示す必要があります。その基準について見ていきましょう。各候補銘柄は以下4つのカテゴリーで評価され、その総合点で順位づけをされます。配点は各項目均等なので、上位ランクインにはバランスよく優れていることが重要となります。
①総負債に対するフリーキャッシュフローの比率
②ROE(Return On Equity)
③年間配当利回り見込み
④直近5年間の増配率
この指標で銘柄評価をするのは非常に合理的であると個人的には感じます。このベンチマークの考え方に非常に共感します。企業が安定的に配当を出すためには、何よりもまず稼ぐ力があることが大切です。ROE(自己資本利益率)は資本金に対してどれだけの儲けをあげているかを数値化した指標です。当然ですが、ROEが高い方が手許のお金を効率的に増やしていることを意味するので良いビジネスを持っている企業と見ることができるのです。
一方で、お金を効率的に稼いでいても負債が多ければ安心して配当金を出すことはできません。そこで、『借金の支払いと株主還元(配当金支払い)を安定して両立できるのか』という視点でも銘柄チェックをしたくなります。そこを上手く拾ってくれるのが、①総負債に対するフリーキャッシュフローの割合(Free Cash Flow to Total Debt)です。

フリーキャッシュフローとは企業が事業収益から将来のための設備投資資金などを除いた後に手元に残ったお金です。つまり、企業の儲けのうち本当の意味で『企業が自由に使えるお金』です。企業はここから借金や配当金の支払いを行います。
負債に対するフリーキャッシュフローの割合が高ければ高いほど、借金も余裕で返せるし、それはつまり配当金に回せるお金も多いことを意味します。
ここまでの指標で企業の配当金を生み出す能力がはっきりとします。しかし、能力があることと意思があるかは別の問題です。なので、直近5年間の増配率も見るのですね。増配実績を確認することで、この企業は儲けをしっかりと配当金の形で還元してくれそうだ(能力に加えて、意思もある)と判断するわけです。
そして、どんなに素晴らしい銘柄でも割高・割安というのがあります。良い企業がたくさんあるなら、少しでも価値に対して割安な株価で買いたいものです。だから、最後に年間配当利回りで順位づけをするのですね(割安な銘柄ほど配当利回りが高いはず)。
このプロセスがとても合理的だと私は思います。米国企業の厚みが継続している間は非常に優秀なベンチマークとなるでしょう。
【SCHD】リバランスについて
Dow Jones U.S. Dividend 100 Indexは、効果の薄い銘柄入れ替えを避けるために前回リバランス時点で組み入れられている銘柄については、先述の総合点評価の結果がTop200までに残っている銘柄はそのまま組み入れるルールになっています(頻繁に銘柄交換をすると取引コストが発生しますので、パフォーマンスに悪影響です)。
そして、100の枠に対して欠員が出ている場合に、総合点評価で上位にランクインしている銘柄を新規採用していきます(総合点が同点で並ぶ銘柄については配当利回りが高いものを優先的に採用)。また、いかなる場合も年1回のリバランスや四半期に一度のモニタリング時点で1銘柄の構成比率が4.0%を、特定のセクターが25%を超えている場合は上限内に戻す調整を実施することになっています。
また、偏りを避ける仕組みとしては日次管理もされており、指数構成比率が4.7%を超える銘柄達のポートフォリオ全体に占める割合が22%を超えた場合は、特定銘柄に偏りすぎと判定されて組み入れ比率の調整が実施されます。このように細かくメンテナンスされているポートフォリオを経費率0.06%で提供するチャールズ・シュワブ社は顧客還元の精神に溢れていると思います。個人で再現するのが難しい管理に対する手数料は対価に対して納得感があります。
【SCHD】トラッキング実績
さて、毎度ながら素晴らしいベンチマークがあっても個人投資家が恩恵を享受するのはもう一段階のハードルがあります。運用会社のトラッキング能力です。それではチャールズ・シュワブ社は期待通りにベンチマークを再現してくれているのでしょうか。

SCHDとベンチマークの1年間の乖離は0.02%しか発生しておらず、10年単位でも0.12%という正確性です。これはトラッキング実績としては問題なく合格点と思います。
まとめ(パッシブファンドに対する向き合い方を再確認)
パッシブファンドへの投資は、自分が腹落ちしている投資理論の実践をプロの資産運用会社に委託する(なぜなら個人で行うのは資金的にも時間的にも困難)のが本来のあるべき姿だと思うのです。
なので、過去のトラックレコードや直近のパフォーマンスを簡単に眺めて投資するのは本質から外れていると思うのです。自分が腹落ちしている投資理論に基づいて運用している金融商品を適正な手数料を支払って成果を享受するというのが、パッシブファンドの保有の本来あるべき姿だと思います。
パッシブファンドに投資する時は、ベンチマークの中身を理解してから投資する。これを愚直に続けるだけでも後悔のない、納得感のある投資ができると思います。人は理解と納得感のないもを継続することはできない生き物です。長期投資による果実を得たければ、自分で運用目論見書を読んでベンチマークを理解する、運用報告書を読んで自分が腹落ちした投資理論はシナリオ通りどうかをモニタリングする、という姿勢が大切かと思います。
私自身も、このような姿勢で資産運用を行っていきたいと思います。そして、そのような姿勢で取り組んでいる資産運用の状況を公開もしながら日本の個人投資家の皆さんに役に立つブログ運営が今後もできたら嬉しいなと思います。

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