【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜 資産運用
こんな方に本記事はおすすめ製薬大手ファイザー社の事業構造から財務指標に関心
SPYDやVYMの構成銘柄に関心がある
本記事のポイント大型M&Aを通じた成長拡大戦略
■売上5兆円規模と業界第2位
■潤沢なキャッシュフロー創出能力
■筆者はVYMおよびSPYDを通じて保有

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜

医薬品分野は特許切れになると低価格のジェネリック医薬品が大量に参入してくるため、その医薬品からの収入が激減します。

そのため医薬品製造メーカーは常に製品ポートフォリオに新薬を追加し続けなければいけない宿命を背負っていますが、ファイザー社は大型M&Aを通じた新薬獲得を生存戦略としてきたことが特徴の企業です

例えば、2014年にはアストラゼネカ(英)を約12兆円で買収する計画を発表して大きな話題を呼びました(結局破談に終わりましたが)。

2016年には”税金対策”を目的に、アラガン社(アイルランド)に1,600億ドル(17兆円)の買収提案を行うなど常に利益最大化にも余念がありません(米当局の介入でこちらも失敗します)。

下記が2000年代以降にファイザーが成功裏に実施した企業買収の歴史になります。

主な企業買収の歴史(総計約28兆円

2000年:ワーナー・ランバート社($1,120億)

2003年:ファルマシア社($595億)

2009年:ワイス社($680億)

2010年:キング・ファーマシューティカルズ社($36億)

2014年:イノファーマ社($3.6億)

2016年:アナコール社($52億)

2016年:ホスピラー社($15.2億)

2019年:テラコン社($4.7億)

2019年:アレイバイオファーマ社($114億)

このように大型企業買収で巨大化したファイザー社ですが、事業部門や医薬品単体(例:英アストラゼネカの抗菌薬事業1,580億円で吸収)の買収も幅広く手がけており、スケールメリットを狙った拡大を続けています。

後述の通り大型買収を繰り返せるだけの強靭なキャッシュフローがファイザー社の強みと言えます。

【PFE】企業情報

会社名 ファイザー(Pfizer Inc.)
ティッカー PFE
市場 ニューヨーク証券取引所(S&P500銘柄)
セクター ヘルスケア(業種:医薬品製造業)
備考 SPYD構成銘柄(2020年6月時点)10年連続増配中
(出典:Yahoo Finance)
【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:S&P. Moody’s, Fitch

【PFE】主要医薬品

この医薬品ポートフォリオで全体の半分(49%)の売上を占めます(2019年)。

*スマホをご使用の方は画面を横にしてご覧ください

医薬品名 売上高(百万米ドル) 使用用途
Prevnar 13 5,847(約6,300億円) 肺炎球菌
Ibrance 4,961(約5,300億円) 抗がん剤
Eliquis 4,220(約4,500億円) 脳卒中等
Lyrica 3,321(約3,600億円) 鎮痛剤
Xeljanz 2,242(約2,400億円) 関節リウマチ/潰瘍性大腸炎の抗炎症剤
Lipitor 1,973(約2,100億円) 動脈硬化予防
Enbrel 1,699(約1,800億円) 関節リウマチ
Chantix/Champix 1,107(約1,200億円) 禁煙補助薬
(出典:アニュアルレポート2019

前述の通りファイザーの企業運営は(自社開発よりも)M&Aでポートフォリオを拡張させていることが特徴です。

2000年に買収したワーナー・ランバート社のLipitorを筆頭に、Prevent 13およびEnbrelを2010年に医薬品メーカー世界9位(当時)のワイス社を680億ドル(約7兆円)で買収することでポートフォリオに追加しました。

また、EliquisはBristol-Myers Squibb社との提携医薬品です。

【PFE】収益構造

事業セクター

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:アニュアルレポート2019

【PFE】バイオファーマ部門(76.2%)

ワクチンやバイオ医薬品の製造を担う部門です。先程紹介した主要医薬品で赤字にしているものがバイオファーマ事業が管轄している医薬品になります。

この部門で394億ドル(約4兆円)を売り上げます。

【PFE】アップジョン部門(19.8%)

この部門で102億ドル(約1兆円)の売上を計上しています。

ファイザー社はアップジョン部門を非感染症性疾患(NCDs)の医薬品製造を担う部門と定義しています。

噛み砕いて言うと、不健全な生活習慣が原因となり発症する病状の治療薬を製造する部門です。

つまり、運動不足や不健康な食事や生活(飲酒・喫煙)を繰り返した結果なる病気ということになります。

先程紹介した医薬品ではLyricaやLipitorが該当します。

因みにアップジョンとはかつて存在していたその分野で高い実績を残していた米国製薬会社の名前に由来します。

【PFE】消費者ヘルスケア部門(4.1%)

消費者ヘルスケアとは薬局などで消費者が直接購入できる医薬品になります。

部門売上は22億ドル(2,200億円)程度になります。

ファイザーは経営合理化の一貫で本部門のスピンオフを決めており、2018年12月に英製薬大手のグラクソ・スミスクラインの消費者ヘルスケア部門を統合し、ジョイントベンチャーの設立で合意しています。

そして、2020年1月には3-4年以内にこの新会社を新規上場(IPO)する計画を発表しています。

背景にあるのは高価格で販売できるバイオ医薬品などに注力したい思惑があります。家庭医薬品ですと数千円程度が相場ですが、高度医療に使用される医薬品は1患者あたり数百万円というケースも珍しくありません。

この高単価医薬品の開発には最先端の研究施設や最新技術に莫大な初期投資が必要になるので、優先順位が低い事業については経営統合や整理が進んで行くことになります。

グラクソ・スミスクラインとの事業統合も施設やノウハウを共用することでコストカットを図り、より優先度の高い投資に資金を捻出する狙いがあります。

地域別売上構成

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:アニュアルレポート2019

米国が主要市場ですが、中国市場での売上を徐々に拡大しています。アップジョン部門のグローバルヘッドオフィスは上海に置いていることからも、ファイザーが中国市場を注視していることが伺えます。

そして、売上第3位には日本市場がランクインしています。この3大市場で売上の6割以上をあげています

【PFE】収益力

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:各年アニュアルレポート

ファイザー社は売上5兆円以上を継続的に稼ぐ巨大製薬メーカー(ロシュ社(スイス)に次いで世界第2位)です。

売上規模もさることながら、ほぼ毎年1兆円以上の純利益を残す驚異的な利益率のビジネスを継続できているのはさすが米国最大の製薬会社というところです。

収益性については申し分ありません。

【PFE】キャッシュフロー

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:各年アニュアルレポート

営業CFおよびフリーキャッシュフローは直近10年間で大幅な黒字を維持しています

営業CFマージンは平均30%以上とキャッシュ創出において非常に競争力があるビジネスを行なっていることが数字でも見て取れます。

業界毎の水準感はありますが一般に15%以上を維持できれば優秀とされますから、ファイザー社はとても優秀と言えるでしょう。

この潤沢なキャッシュ力を武器に大型M&Aを繰り返して世界屈指の製薬会社に躍り出ました。

【PFE】財務健全性

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:各年アニュアルレポート

有利子負債/EBITDAが意味するところは、『EBITDAを全て借金返済に充てた場合に、完済に必要となる年数』です。

つまりこの数字が0に近づくほど財務健全度は高いと言うことです。

2016年には3.39倍まで到達しましたが、直近は2.34倍と漸減傾向であることや、下記の通り流動性もまずまずであることを踏まえるとファイザー社の財務健全性は特段懸念される状態にありません。

【PFE】ファイザー銘柄分析〜売上高世界第2位のメガファーマー〜
(出典:各年アニュアルレポート

2019年にアレイバイオファーマ社を1兆円以上かけて大型買収したことで、流動資産を減らし借入金が増加したので流動比率が下がりました。

しかし、前述の通りキャッシュフローが潤沢な会社なので、大型M&Aに伴う一時的な指標変動に一喜一憂する必要はないと思います。

買収を通じて新規追加した医薬品のキャッシュフロー貢献度がファイザー社の生命線なので、医薬品の承認状況や売上単価等をウオッチしていくことが重要な銘柄になります。

筆者はここに時間を割けないので、SPYDVYMを通じてファイザー株を保有しています。

【PFE】配当金実績

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(出典:各年アニュアルレポート

足許の配当利回りは3.98%(6月2日時点)と高配当になっています。

ファイザー社は2010年から10年間連続増配中の銘柄になります。毎年$0.08ずつ増配しており、コロナショック以降も第二四半期時点で増配維持を実現しています

配当性向も落ち着いて来ているので、減配の心配は足許なさそうです。

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