ブラックロック社が展開するIGOV(iシェアーズ世界国債ETF)は米国を除く先進国の国債に広く分散投資するETFです。この1本で信用力が最も高い世界の国債を丸ごと保有できるのがメリットになる債券ETFです。
バンガード社が国債や先進国という制限なく、世界中の債券市場を丸ごと保有するBNDXという全世界ETFを展開しています。IGOVは債券市場の中でも最も信用力の高い国債に特化して分散投資をしたいというニーズがある人に選択肢となりえるETFになります。
本記事ではIGOVの基礎情報から、配当利回り、トータルリターンについて解説します。
【IGOV】基礎情報(株価・経費率・配当金)
(2023年2月2日時点)
2009年から運用されており歴史と実績は十二分なETFです。一方で、経費率は0.35%とやや高めです(似たような世界分散の債券ETFであるBNDXは0.07%なので)。
運用会社 | ブラックロック社 |
株価 | $41.09 |
設定日 | 2009年1月21日 |
ベンチマーク | FTSE世界先進国債キャップ・セレクト・インデックス |
分配金頻度 | 不定期 |
総資産 | 12億米ドル |
経費率 | 0.35% |
銘柄数 | 756 |
平均残存年限 | 9.90年 |
平均デュレーション | 8.24年 |
出典:iシェアーズ世界国債ETF(除く米国) |
【IGOV】投資地域
IGOVは先進国地域の国債に分散するETFで、上位10カ国で全体の65.33%を占めます。その筆頭が日本で15%程度を占めます。日本は米国を除くと最大の経済先進国であることがよくわかります。

日本 | フランス | イタリア | ドイツ |
15.45% | 8,28% | 7.23% | 6.33% |
スペイン | 英国 | シンガポール | オーストラリア |
4.85% | 4.70% | 4.67% | 4.62% |
ベルギー | カナダ | オーストリア | オランダ |
4.61% | 4.59% | 4.59% | 4.59% |
アイルランド | フィンランド | イスラエル | デンマーク |
4.58% | 4.57% | 4.28% | 4.03% |
ニュージーランド | スウェーデン | ノルウェー | 現金等 |
2.80% | 2.44% | 2.36% | 0.42% |
【IGOV】保有債券の信用格付
IGOVのポートフォリオは投資適格(BBB以上)で構成されており国債の中でも安全度が高い国を中心に組み込まれているのが分かります。長期投資を前提にしたポートフォリオの一部として債券ETFへの投資を検討するのであれば投資適格以上というのは高評価したくなるポイントです。
AAA | 36.40% |
AA | 31.31% |
A | 24.65% |
BBB | 7.21% |
現金等 | 0.44% |
【IGOV】トータルリターン(ボラティリティ)
2010年以来の平均年間リターン(CAGR)は▲1.22%と振るわない結果になっています。この主要因は2022年に▲22.07%と大幅なマイナスを記録したことです。国債を含む債券ETFは政策金利の影響を強く受けます(詳しくはこちら)。2022年は世界規模でインフレの波が発生しており、欧米を筆頭にハイスピードの金融引き締め(利上げ)に各国が動いた影響が如実に現れています。
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
▲2.2% | ▲7.15% | 0.86% | 11.38% | ▲2.6% | 3.76% | 10.88% | ▲9.25% | ▲22.07% |

直近13年程度を見れば振るわない結果と書きましたが、その主要因が異次元の低金利環境であったことを踏まえると利上げフェーズがひと段落すれば投資妙味が生まれる可能性はあります(債券と金利は、金利が低下すれば債券価格は上昇する関係にあるため)。
【IGOV】分配金推移(年間配当金)
2022年の世界的インフレ発生に伴う各国利上げで状況は変わるかもしれませんが、昨今は日本をはじめとして欧州先進国でもゼロ金利やマイナス金利が適用されていたので国債の利回りはゼロ付近に張り付いていました。こうした背景から2020年は分配金はゼロであったり、2018、2019、2021、2022年は12月の一度のみしか分配金が払い出されませんでした。

【IGOV】分配利回り・配当利回り
IGOVの分配金利回りは近年の低金利環境を反映して低空飛行が長く続いていることが見て取れます。分配金目的の投資としては魅力が薄かった10年間だったと言えるでしょう(国債発行主体である各国政府や間接的に恩恵を受ける企業からすると非常に有利な条件で資金調達ができボーナス期間であったことがよく分かります)。

【IGOV】個人的な所感
IGOVは投資適格(BBB以上)の格付を付与された世界の国債に分散投資する優れた手段ですが、経費率の高さが検討の入り口で気になりますね。世界分散の国債ETFは長期投資を前提に検討される方が多いでしょうから、保有コストは複利で効いてくるので慎重に考えなければなりません。当ブログでは繰り返し述べていますが、長期投資の一番重要な要素である『複利』を敵にまわすと資産運用で結果を残すのはそれだけで著しく難しくなります。
コスト以上の見返りがあるのであれば投資価値はあるのですが、(1)分配金の安定性(2)トータルリターン(3)ボラティリティを総合的に勘案した際にコストと釣り合っているかは微妙なところがあります。個人的には世界分散の効いた債券ポートフォリオを資産運用の一部に組み込みたいのであれば、低コストで似たようなコンセプトで運用されているバンガード社のBNDXをまず検討したいかなと思います。
また、主要先進国の国債の安全度が非常に高いことを考えれば分散にこだわるのではなく利回りが比較的高い米国債(もしくはAGG,BND)を代替手段として検討するのもアリだと思います。
純資産が12億米ドルというのも2009年運用開始の歴史あるETFにしては少し寂しいのも、こうしたライバルETFに資金が流れてしまっているのも一因かなと思われます。
投資対象としての国債については、以下の記事でもまとめています。資産形成期は株式を中心にリスクを取り、取り崩しが見えてくる老齢期に徐々にポートフォリオの一部を国債中心の安全性の高い債券に置き換えていくのが私の基本スタンスです。

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