2022年もそろそろ終わりを迎えようとしています。株式市場にとっては厳しい一年であったと言えるでしょう。
ダウ平均▲20%、S&P500▲25%、ナスダック▲30%という指数たちが良く物語っています。日本人が円建評価で見ているのであまり実感がないかもしれないですが、米国資産は確実に毀損しています。
こうした厳しい環境下でしたが、私のポートフォリオはHDVやVYMを筆頭に底堅さを見せてくれました。あまり多くを望まない私としては長期分散を基本としたバリュー色の強いETFがやはり好みです。2023年もこうした銘柄を淡々と積みます全体的な戦略に変更はありません。
短期的な戦術としては、やや工夫の余地があるように感じているので2023年はキャッシュポジション(もともと50%以上と高め)の働きを高めていきたいと考えています。
諸々の前提
本記事の内容とは別にインデックスファンドの積立や米国高配当ETFの買付はこれまで通り続けます(これは相場環境によらず不変)。これしかやらないという趣旨ではありません。あくまでも待機資金の使い方についてです。
なお、人によって最適な戦術は当然ながら異なります。資産計画、資産状況、支出見通しなど各人によって異なるので物事の判断基準の前提が変わってくるためです。そして、あえて書くまでもないと思いますが、この方法を推奨している訳ではないことはご理解ください。
国債や債券について理解がないうち変に待機資金をむしろいじらない方が良いと思います。
リスクフリー資産を中心に活用を検討(それで十分)
私は米国証券口座を利用しています(確定申告が面倒ですが、私は基本的に配当金と後述の利息だけなので慣れれば簡単)。米国証券口座の特徴として現金に利息がつきます。なので高金利が定着している今年に限っては放置でも良いのですが、米国債(現物)と米国債ETFの活用を検討しています。
その理由は米国債の利回りが最近ではありえなかった水準に回帰しているためです。株式の期待リターンが3-5%程度だと考えるのであれば、リスクフリーレートで4%前後を確保できるのは妙味があると私は思っています。リスクフリーレートは、株式や社債などの利回りの適正感を考える文脈での国債利回りのことです(詳しくはこちら)。世界的には米国債を意味することが多いです。

リスクフリーとリスクゼロは厳密には同義ではないです(念の為)。リスクがないものにリターンは生じません。株式などのリスク資産に対してリスクが限りなく少ない(なぜならリスク概念の出発点だから)という意味で無リスク資産とみなされています。


検討内容
重要なポイントなので改めて書いておくと、待機資金の使い方がテーマです。待機資金はあくまでも本命であるVYMやSCHDなどの米国高配当ETFを購入するのが本来の用途です。
ここから逸脱しないことを前提に『現金100%で何もしない』というポジションから価格リスクと流動性リスクを極力高めずに追加のキャッシュフローを得られないかというのが私の課題設定です。
具体的には現金のポジションを①現金、②米国債(現物)、③米国短期債ETFに振り分けようと考えています。現金はCash is King(現金は王)の言葉に体現されるように流動性や選択肢確保の観点でも最強の手札になります。特に景気サイクルの崖が見えている2023年のように不透明な局面では、その価値が高まります。
私からするとUS Treasury bonds/bills are queens(米国債は女王)。世界最高の流動性を誇る米国債は投資家にとって最後の砦です。この米国債が先行き不透明(やや悲観が混じる)ような相場で4%前後のリターンを約束してくれていることに、どうしても目がいきます。また、株式などのリスク資産とは基本的に逆相関の関係にあります。
米国債ポジションから利息収入を受けつつ米国株式指数が下落するような局面では、米国債をキャッシュに戻して値下がった米国高配当ETFを買い増し。買い場が来なければ利息を運んでくる準キャッシュポジションとして、そのまま持つというような両面作戦を取りたくなっています。
①〜③の具体的な割合や米国債(現物)の保有年限については解がまだ私の中にはないので悩み中です。考えるのが楽しいです。
なお、入ってくる利息は米国高配当ETFの購入資金に充てます。
米国債(現物)
米国債を現物保有することのメリットは満期があり、満期保有を前提に利回りが確定することです。米国債も金融商品なのでマーケットでの取引価格は日々変動していますので、途中売却の際には購入金額に対して勝ち負けが発生しています。
しかし、満期まで保有すれば額面金額通りに元本が償還されますので購入時点でリターンが確定します。この条件で利回り4%前後というのが美味しいのです。これらの特徴を踏まえて次のようなシナリオとアクションを想定します。
米国債上昇 | 米国債下落 | |
満期保有 | ○ | |
途中売却 | ○ |
また、現物の特徴は経過利息の概念があることです。米国債は基本的に半年1回(年2回)のペースで利息支払いが行われます。ここで問題になるのは途中売却の時に次回利息を受け取る権利は買い手と売り手のどちらにあるかという点です。

そんなの新しい保有者(買い手)に決まってんだろ!
というように考える人もいるかもしれません。しかし、例えば最後の利息から次回利息まで180日あると仮定して、売り手が179日間保有している場合でも180日目に買い手が変わったことで、その利息収入の権利が全て買い手に移るのは公平な取引でしょうか?
公平云々は抜きにしても、あと一日長く持てば利息がもらえるのであれば売りたくないと普通の人は思うでしょう。こうしたことが起きては市場取引が円滑でなくなります。そこで常識ならぬ市場慣行として次回利息の権利は保有日数に応じて配分されることになります。上述の例だと日割計算して買い手が179日分の利息見合いの金額を国債取引価格に上乗せして売り手に払います。
利息は年2回の支払日まで出てこないですが、概念的には日々積み上がっているということで経過利息と呼びます(英語ではAccrued Interest)。現物取引の場合は経過利息を勘案して取引が行われるのでいつ売買しても利息に関して損得が発生しません。
一方で、米国債ETFだと権利落ち日の概念があるので、権利落ち日前日に保有していた人が分配金に関しての権利を総取りします。
米国債ETF
米国債ETFにはリアルタイムで売買できるメリットがありますが、満期の概念がないためリターンが購入時点で確定しないという点で現物とは大きく異なります。現物保有とETFは似て非なる物です。
今回の戦術における米国債ETFは準待機資金という位置付けなので日々の値動きが小さいもの。つまり、償還期限が短いものをチョイスします。具体的には1年未満を想定しています。
日本の証券会社では取引ができないのですが、ブラックロック社のSGOVを考えています。SGOVは償還期限が0-3ヶ月の短い国債をポートフォリオとしたETFになります。

現物保有とETFを混ぜる理由
【ここからは国債の基礎知識がないとやや難しいです】
現物保有の魅力は満期保有で利回りが確定すること。例えば、”人生設計から逆算”して必要なリターンが年率4%なら米国債で確定できる(わざわざ株式の不確実性に手を出す必要がない)。

人生設計から逆算というのがポイント。人生設計を丁寧に行うことで資産運用の設計図の精度が変わってくる。資産運用の設計図があって初めて、現在地から目的地までの地図が描ける。その地図を見ながら取るべき道(リスクとリターンの組み合わせ)を考えることができる。
(日本人は為替リスクも考えないとですが)今の相場は基軸通貨という世界唯一の特権を持つ米国政府の信用リスクで利回りを4%前後に固定できる相場(これは事実)。そして、ゼロ金利時代と異なり中長期的には利下げが可能な金利水準なので含み益を乗せて途中売却できる選択肢が増える可能性もある(これは私の感想も入ってる)。
つまり、現物保有のイメージは『最低利回り4%(+α期待あり)』をほぼ確実に取れるポジション。
これだけ聞くと良いこと尽くしに聞こえるのに、なんで100%現物保有にしないかといえば、米国債に振り向けるのは待機資金であり、本来は株式購入資金の役割を担うポジションということに関係します。
最低利回り4%は満期概念とセットなので、含み損内容によっては資金拘束(株式購入の権利の消滅)が発生します。ここはバランス感覚ですが確実性のある4%利回りは魅力的であるものの、本来は株式購入資金である趣旨を鑑みると資金拘束の可能性が生じえるポジションに全力で振り向けるのも、それはそれで腹落ち感がありません。
これは私の主観ですが、現物保有は満期保有をベースケースにして差し支えない割合が基本と考えています。
【私は基本的に満期概念がある現物保有がベターとの立場ですが、ETFに期待する役割がこのジレンマとの関係で生じてきます】
0-3ヶ月の償還期限の米国債(現物)を常にロールオーバーするのは手間も取引手数料も発生しますし、常に自分が望む年限・利回り条件の既発債が市場で出回っているとは限りません。しかし、ETFであればそのような心配はありませんし、毎月1回の頻度で分配金の形で利息を受け取ることができます。
ETFには満期保有の概念がないのが、この場合はメリットになります。価格変動リスクというデメリットについてはSGOVの価格感応度実績で確認した通りです。価格変動リスクはもちろんゼロではありませんが、SGOVについては定期預金よりも流動性に優れる高金利の準預金ポジションというイメージでいます。
(私は下方向の価格変動リスクを取りたくないので)このポジションは値上がりが期待できないほか利率も市場動向次第では想定より低下するのがデメリット。しかし、その欠点と引き換えに現物保有よりも好きなタイミングで売りやすく、それでいて現金よりかは利回りに優れるというのが私の中で妙味を見出しているポイント。
このような発想で現物とETFを使い分けて行きたいと考えています。なお、繰り返しながらベストミックスは悩み中です。みなさんならどうしますかね?
考えられるリスクと捉え方
まず考えられるリスクとしては機会損失でしょう。2023年の米国株式市場が下落または横ばいの展開であれば安全地帯から4%の利息をもらいながら高みの見物ができます。
一方で、FRBが利下げに踏み込んだり米国企業業績が予想より好調などを要因に2023年は米国株が急騰するような一年なのだとしたら4%の利息もらって喜んでる場合じゃなかった(現金比率を下げてマーケットインしてればよかった)となるでしょう。
このシナリオに対する私の考え方は、機会損失は別に良いということです。確実性のある4%は私にとって十分なリターンなので満足いく水準です。機会損失を回避するには不確実性に手を出す必要があります。私は確実性のある4%と不確実性と引き換えの+αの可能性を天秤にかけて前者をとるという判断をしています(違う判断になる人も当然いると思います)。
また、上述のとおり『待機資金』の活用の仕方というのが目線なので。リスク資産への投資資金は別に考えています。
また、もう一つのリスクは株式と米国債の同時安です。私は『株式と米国債の動きは基本的に逆相関』と書きました。しかし、何にでも例外や予想外はあります。今回の米国債(現物)及び米国債ETFの保有はチャンスがあれば途中売却して株式を買い増すという+αも見込んだポジショニングです(だからなおさら4%の利息付きというのが美味しく見える)。
チャンスであるはずの米国株式市場の下落局面で米国債価格も下がっていく場合は+αの期待が水泡にきします。この期待外れリスクに関してですが、米国債(現物)に関しては満期保有を選択します。これで当初想定のリターンは確保できます。4%は最低限確保できるのでこれはこれで良しとします。
また、中長期的には利下げ余地がある金融環境なので旨味のある途中売却チャンスはいくらでも訪れるだろうと楽観的でいます。
また、米国債ETF(SGOV)に関しては年限を抑えており、価格感応度は十分に小さいと考えています。仮にシステミックリスクが金融市場を襲って米国債までパニック売りされるような場面でも冷静に考えて米国政府が3ヶ月以内に破綻するなんてあり得ないのですぐに(少なくとも他の金融商品と比較にならないスピードで)価格は元に戻ると考えています。つまり、リスクは許容範囲内と位置付けています。正確には許容範囲内から逆算して年限が短いものを選んでいます。
最後に
今回は2023年における待機資金に対する私なりの向き合い方ということでした。なのでふるインベストメントの方には何の参考にもならなかったと思いますが、以下にざっくり概要をまとめておきます。
現金(100%)を現金、米国債(現物)、米国短期債ETFに振り分ける。これらをひとまとめに準キャッシュポジションとして一定の比率をキープ。利息をもらいながら株式市場の下落を睨む。利息収入は米国高配当ETF(VYMやSCHD)の購入追加資金に利用。
前提として、私が臆病かつ保守的かつリターンに多くを望まない姿勢であるというのがあります。私は現金以外の金融資産を株式に振っていますが、そもそも投資の原点基礎は米国債であると考えています。そういう意味では2023年にポートフォリオに加えられるかもしれないということで密かにワクワクしています。
なお、米国債に関しての関連記事も載せておきます。本記事では割愛した現物とETFそれぞれの特徴や私の考え方などはこちらで掘り下げています。

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