VIGは経費率(0.06%)、運用実績(2006年〜)、純資産規模(約8.7兆円)の三拍子揃った超優良ETFで、インデックス投資(VTIやVOO)を軸とした資産運用をある程度極めた投資家を中心に人気が厚い銘柄です。そんなVIGは安定した連続増配実績(10年超えが採用条件)に、一般的に財務体力に優れる銘柄構成となっており下落相場にも相対的に強いことが最大の特徴です。
この記事ではこの特徴を踏まえて、①VIG長期保有の強み、②VIGの保有が向いている人、③VIGの効果的な使い方の3点に焦点を当てて、連続増配ETFであるVIGを分析•解説をしていきたいと思います。
結論から述べるならば、VIGを長期保有することで(相対的に)安定的に高いキャピタルゲインを期待できます。また、VIGとQQQを組み合わせることでよりリスクとリターンのバランスが取れたポートフォリオを構築することも可能です。
【連続増配ETF】VIG株価・構成銘柄の特徴
まずはVIGの基本概要である株価傾向や構成銘柄について復習をしておこうと思います(詳しくはこちらで記事にしてます)。VIGは業界で圧倒的な地位を築く大型米国企業で、信用格付が大変優れた銘柄が上位に顔を連ねます。S&PよりAAAの企業格付を付与されているのは米国企業強しといえど、世界でJohnson & JohnsonとMicrosoftの2社のみです。VIGは私が最も美しいと感じるETFの一つです。
保有銘柄 | 保有割合 | S&P格付 | 連続増配年数 |
United Health Group | 4.21% | A+ | 13年 |
Johnson&Johnson | 4.08% | AAA | 59年 |
Microsoft | 3.87% | AAA | 19年 |
Procter & Gamble | 3.04% | AA- | 65年 |
JPMorgan Chase | 2.89% | A+ | 12年 |
Visa | 2.74% | AA- | 14年 |
Home Depot | 2.50% | A | 13年 |
Mastercard | 2.38% | A+ | 11年 |
Coca Cola | 2.14% | A+ | 59年 |
PepsiCo | 2.01% | A+ | 50年 |
出典:バンガード社HP(2022年8月時点) |
株価もVOOと遜色ない長期右肩上がりの実績を見せています。

【連続増配ETF】VIG長期保有の強み
一言で言うならば、長期運用を行う中で市場平均に近いパフォーマンスが期待できる。

うん?市場平均に近い成績なら、VTIやVOOで良くないかい?あえてVIGに投資する意味はないと思うのだけど。。。。
ここで構成銘柄の復習が生きてきます。VIGは財務健全性が堅牢(信用格付が非常に高い)であり、毎年連続増配できるほどに収益性の高いビジネスを持つ大型米国企業でポートフォリオが構成されています。このため米国株式市場の中では相対的に売られにくい銘柄が多いのがVIGの特徴なのです。また、割安感が出れば真っ先に買い注文が入る銘柄群でもあります。このため、下落しづらく回復も早い株価チャートになっています。

”投資成績の良さ”はリターンの大きさ(絶対値)だけでは測れません。リスクあたりのリターンの大きさ(相対値)が優れている方が投資としての価値は高いといえます。この観点でVIGを評価すると、VIGはVTIやVOOよりも少ないリスクで市場平均に近いパフォーマンスを残してきた投資価値の高いETFだと見ることもできるのです。
VOOやVTIは時価総額加重平均でパフォーマンス良好な銘柄(現在だとGAFAMやFANGとして地位を築いている大型テック企業群)の影響を強く反映します。これはその時勢で強い銘柄の勢いを指数に反映していくインデックス投資の強みでもあるのですが、同時に過渡期には過熱感気味の銘柄の影響も等しく受ける弱みでもあります。このバラつきをならした結果がVTIやVOOの市場平均ということになりますが、VIGは極端な成長銘柄は入らず、この市場平均により近い銘柄が集まっているようなイメージです。ここに好みが別れる余地があります。
VIGの643億米ドル(約8.7兆円)という純資産規模は、この投資価値の適正感が評価されてのことだと思います。
『リスクあたりのリターン』は、シャープレシオやソルティノレシオという指標で評価することができるので次章で詳しく見ていきたいと思います。このリスクあたりのリターンという観点に重きを置いている投資家の方にはVIGは非常におすすめできるETFです。バランスに優れており、ほかのETFと組み合わせる際のコアとしても有能です。
【連続増配ETF】VIGとQQQを組み合わせる
2022年8月現在のポートフォリオは以下の通り、情報技術の占めるセクター比率が高くなっていますが、VIGは『連続増配年数が最低10年』という条件がありますのでテック企業が少なめな傾向が比較的強いETFとなっています。そして、(情報技術セクターの比率が高まっている)現在もアマゾン、テスラ、メタ、アップルなどの巨大テック企業は構成銘柄外です。以上を踏まえると、無配テック企業(成長投資優先)中心のポートフォリオとなっているQQQがともにポートフォリオを構築するパートナーとしては面白い組み合わせになるかと思います。

VIGとQQQの重複銘柄は21あり、VIG視点ではQQQに対する銘柄重複率は7.3%という関係です。VIGもQQQもキャピタル成長性に優れたETFですが、それぞれ構成銘柄の特徴に差があるので分散効果によるポートフォリオの厚みをもたらしてくれる組み合わせとなるでしょう。以下にリーマンショックを含む2007年1月から2022年7月までのポートフォリオ成績のバックテスト結果をご紹介します。

比較対象のベンチマークとしてVIG単体(オレンジ色)とVOO(緑色)を追加しておりますが、いずれの比較対象よりもVIGとQQQを組み合わせたポートフォリオがトータルリターンで勝っていることが分かります。なお、利回りの優劣はリスク単位で比較しないと意味がないので、シャープレシオとソルティノレシオについても以下の表にまとめました。50:50はVIGとQQQを50%ずつの割合で組み合わせたパターン、40:40:20はVIGとQQQを40%ずつ組み込み20%の空きをAGG(米国総合債券ETF)に充てるパターンになります。
CAGR | 標準偏差 | シャープレシオ | ソルティノレシオ | |
50:50 | 12.05% | 15.56% | 0.76 | 1.17 |
40:40:20 | 10.61% | 12.54% | 0.80 | 1.25 |
VIG | 9.15% | 13.65% | 0.65 | 0.97 |
VOO | 9.16% | 15.69% | 0.59 | 0.86 |
<シャープレシオとは?>
リスク(標準偏差)を1単位当たりのリターンを測る指標。同じリターンでもシャープレシオがより大きい方が効率的な投資と言える(少ないリスクで同じリターンをあげている)。
<ソルティノレシオとは?>
リスク(標準偏差)について上昇方向は考慮せず(←上振れする分には投資家にとって有益なため)、下落方向に動いたリスクのみを抽出して、この下落リスクとリターンのバランスを見る指標。算出結果が大きいほど取ったリスクに対して適正なリターンを得られていることを意味する。
50:50のポートフォリオは、市場平均(VOO)を年率で約3%(12.05%>9.16%)上回るトータルリターンを見せて今回の比較の中では最高の成績を収めました。これはQQQのリターンの爆発力(上振れリスク)がVOOやVIGよりも高かったことに起因します。一方で、QQQは下振れリスクも相応に大きいので、リスクあたりのパフォーマンスとしては40:40:20がベストマッチになっています。
40:40:20の良さとしては、上昇局面ではQQQとVIGが強さを見せる理想的な展開となり、下落局面では株式ETFの中では相対的に優れた下落耐性と回復力を見せるVIGと標準偏差(ボラティリティ)が低いAGGがクッションとなりダメージを比較的抑えられることです。具体的な数字は以下の通り。
Best Year | 最大下落率 | |
50:50 | 37.13% | ▲45.16% |
40:40:20 | 30.30% | ▲36.01% |
VIG | 29.62% | ▲41.11% |
VOO | 32.18% | ▲50.97% |
リーマンショックが直撃した当時はどの銘柄も叩き売られたわけですが、具体的な数字から分かるのはVIGが相対的に強かったこと、また、40:40:20はそのVIGよりも強い下落耐性を見せたことです(しかもリターンについてもVIG単体より改善している)。
QQQは標準偏差(ボラティリティ)が高く、長期低迷する時代もあったので単独でホールドするには正直勇気がいる銘柄です。そこにVIG(さらに希望に応じてAGGも)トッピングすることでリスクとリターンのバランスの最適化を図ることができます。
VIGはリスクとリターンのバランスが優れたETFです。そのため、VIGをコアにすると色々な可能性が広がります。その可能性の一つとして、QQQやAGGをトッピングするのも面白い選択肢だと思われます。VIGは単体でも魅力あるETFですが、ほかの優れたETFとも組み合わせやすいのがGoodです。個人的には資産クラスも段階的に分散していくことが好ましいと考えているので、債券ETFが活躍する優れた例として今回の検証結果は個人的にも興味深いものになりました。
VIGの全体像により関心が高まった方はこちらの記事を、米国総合債券ETFのAGGについても関心を深められた方はこちらの記事もぜひご覧ください。

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