
配当貴族とはすごい名前だけど、一体どんな銘柄なんだ!?

今回も配当再投資がポイントになりそうな予感
以前にこちらの記事で『連続増配年数が50年以上』の配当王銘柄でポートフォリオを構築して30年間運用したら市場平均(S&P500)に対してどのようなリターンを残していたのか、というバックテスト検証結果を記事にしてみたところ非常に好評でした。
前回記事の好評ぶりを受けて、今回は配当貴族銘柄についてリターン分析に関する記事になります。
この分析には3万円(円安が辛い😢)を支払って海外の分析ツールを使用しています。そういう意味で有料級の記事になっておりますので、皆様の参考になれば嬉しいです。
【米国株】配当貴族銘柄の条件
配当王銘柄としてカウントされるための条件は、『連続増配年数が最低でも50年以上あること』と言う年数にかかるものでした。一方で、配当貴族銘柄になるためには以下4つの条件を満たす必要があります。(調べた限り)配当王銘柄の指数はないのですが、配当貴族銘柄は指数(S&P 500 Dividend Aristocrats Index)が存在します。そのためか選定基準がより細かく定義されている印象を受けます。
American States Water(連続増配年数:67年)は①の条件を満たさないので、配当王銘柄ながら配当貴族銘柄ではありません。このように『配当王銘柄であれば自動的に配当貴族でもある』という風にはならないのです。この全ての条件を満たしている銘柄は現在のところ65銘柄あります。
【米国株】配当貴族銘柄の一覧(65銘柄)

配当利回りは約2.25%で、連続増配年数の中央値は45年でした。連続増配と高配当は必ずしもイコールではないので、配当利回りは控えめという結果です。しかし、特筆すべきは連続増配年数の中央値でしょう。日本最長の連続増配年数を誇る花王でさえ、31年であることを考えると、配当における米国企業の層の厚さを実感します。
配当貴族銘柄であるためには、S&P500の構成銘柄でなければいけません。S&P500は時価総額が上位の米国企業群で特定の条件(4四半期連続で黒字etc.)を満たすエリート企業だけが組み込まれます。一度加入できても、弱体化すれば除外されますし、実力健在でも相対的に地位が下がればS&P500の座席数は限られているので、やはり除外されます。このようなスクリーニングをかけて絞り込んだ中に、連続増配年数が25年以上の企業が65銘柄もあるのは米国ならではの魅力と感じます。
【米国株】配当貴族銘柄 VS S&P500
利用可能データ年数の関係でAmcor PLCおよびAbbVieを除外した63の配当貴族銘柄を均等加重平均したポートフォリオをS&P500のリターンと比較します。
計測期間は1995年1月1日から2022年3月31日です(27年)。最初に$10,000だけ投資して、その後の追加資金は配当再投資のみで放置したら、27年後に資金がどれだけ成長したのかというバックテスト検証になります。
トータルリターンの比較(配当貴族 VS S&P500)

1995年に$10,000(約をS&P500に投資していた場合、27年後には$160,980に運用資産が成長していた計算になります。投資元本に対して16倍と素晴らしい運用成績です。
そして、これにもまして素晴らしい運用成績を残していたのが『配当貴族ポートフォリオ』です。同期間中に同条件で運用を行なった場合、最終的に$442,823まで成長している計算となりました。
1$=100円の前提で考えると、100万円を配当貴族ポートフォリオに預けて放置していたら引退フェーズには4,400万円以上になっていたということです。投資効率を示すシャープレシオは0.97という圧倒的な成績になりました。
2024年目標のFIREを達成したら、個人的にも趣味で構築してみたいポートフォリオです(63銘柄は多すぎるので、もう少し銘柄数を絞ったポートフォリオで同じような成績を残せないか今後の研究課題としたいと思います。
S&P500 | 配当貴族銘柄(63種) | |
年平均リターン | 10.74% | 14.92% |
最大下落率 | ▲50.97% | ▲34.92% |
ワースト・イヤー | ▲37.02% | ▲20.74% |
ベスト・イヤー | 37.45% | 36.80% |
シャープレシオ | 0.61 | 0.97 |
ソルティノレシオ | 0.90 | 1.53 |
配当貴族銘柄は株式市場の下落局面での強さを図るソルティノレシオでも1.53と市場平均よりも強いことを示しています。
年別の勝敗比較(1995〜2021)
配当貴族ポートフォリオとS&P500の1995年から2021年までの各年のリターンをグラフにしたものです。配当貴族ポートフォリオがマイナスリターンになったのは、27年間で3回という結果でした。この結果からも、下落に対して強いのがよく分かります。

配当貴族ポートフォリオが市場平均を上回った年を青字にしてあります。そして、下記の表のとおり配当貴族銘柄の19勝8敗という結果でした。
配当貴族ポートフォリオ VS S&P500(年別の勝敗一覧) | ||
配当貴族ポートフォリオ | S&P500 | |
1995年 | 31.95% | 37.45% |
1996年 | 27.12% | 22.88% |
1997年 | 36.80% | 33.19% |
1998年 | 20.20% | 28.62% |
1999年 | 5.18% | 21.07% |
2000年 | 17.78% | ▲9.06% |
2001年 | 9.55% | ▲12.02% |
2002年 | ▲2.65% | ▲22.15% |
2003年 | 25.46% | 28.50% |
2004年 | 22.94% | 10.74% |
2005年 | 8.06% | 4.77% |
2006年 | 21.23% | 15.64% |
2007年 | 8.90% | 5.39% |
2008年 | ▲20.74% | ▲37.02% |
2009年 | 23.29% | 26.49% |
2010年 | 20.02% | 14.91% |
2011年 | 8.43% | 1.97% |
2012年 | 17.66% | 15.82% |
2013年 | 31.41% | 32.18% |
2014年 | 14.87% | 13.51% |
2015年 | 2.08% | 1.25% |
2016年 | 14.26% | 11.82% |
2017年 | 22.43% | 21.67% |
2018年 | ▲1.82% | ▲4.57% |
2019年 | 27.35% | 31.33% |
2020年 | 10.71% | 18.25% |
2021年 | 27.89% | 28.53% |
そして、(実質リターンは当時のインフレ率を割引く必要がありますが)1990年代の株式リターンが凄まじいですね。このように運用資産は毎年平均的に成長を続けるのではなく、いくつかの極端なハイパフォーマンスの年に大きく伸びるのがよく分かります。長く相場に居続けることがいかに重要かを改めて再認識させられます。
配当貴族ポートフォリオの年間配当金推移

配当貴族ポートフォリオの平均増配率(1996〜2021)は約14.7%でした。配当金は初年度の$276から始まり27年後には$9,306(約115万円)と33倍に成長した計算になります。この時点で元手$10,000に対する配当利回り(Yield on Cost)は93%です。時間をかけること、複利の力を最大限に活かすことの重要性がよく分かる配当曲線です。
米国配当貴族ETF(NOBL)
Proshares社からS&P500 Dividend Aristocrats Index(S&P500配当貴族指数)に連動する NOBLというETFが出ています。NOBL(ETF一本)で上述のような運用成績が実現できるのであれば朗報です(なお、SBI証券や楽天証券では取扱いがないのでNOBL購入には海外証券口座の開設が必要)。
NOBL基本情報(2022年4月12日時点) | |
設定日 | 2013年10月9日 |
銘柄数 | 65 |
株価 | $95.69 |
純資産額 | 100億米ドル(約1兆2千億円) |
経費率 | 0.35% |
配当利回り | 2.59% |
配当回数 | 四半期毎(3月、6月、9月、12月) |
出典:Proshares(NOBL) |
配当貴族銘柄(時価総額加重平均 VS 平均均等加重)

2014年1月〜2022年1月までの8年間を対象にバックテストを実施しました。結果としては、均等加重平均でポートフォリオを構成する方が、NOBLのように時価総額加重平均でポートフォリオを組むよりもパフォーマンスが良いとの結果になりました。
配当貴族(均等加重平均) | NOBL | |
年平均リターン | 13.34% | 11.87% |
シャープレシオ | 0.96 | 0.85 |
ソルティノレシオ | 1.57 | 1.34 |
配当銘柄がハイパフォーマンスを見せる秘密は、配当金を原資に割安な株価で自己増殖を続けるからですが、時価総額の大きい株式は相対的に割安感が薄くなるため、この配当投資の強みが緩和されてしまっていることが一つの要因だと思われます。
米国配当貴族ETF(NOBL)は買いか?
個人的には経費率0.35%が気になります。コスト的には決して安くなく、コストも運用期間が長期になるほど複利の力で影響が増大していくからです。この配当再投資の強みを活かすには時間をじっくりとかけていく運用スタイルが好ましいのですが、その過程でマイナス要素も増幅させてしまうので良し悪しの判断が複雑です。プラス要素の増幅が仮に勝ったとしても、その成果が経費率0.35%を支払って有り余るぐらいに圧倒的かの保証はありません。
不確実性に賭けるのが投資ですが、確実に削れるところ(運用コスト)は削っておくのが基本だと考えます。このため個人的にはどうしても欲しいという感じにはなりません。また、バックテストの結果を踏まえても割安株でポートフォリオを組むなら均等加重平均の方が私の好みです。
しかし、経費率が許容範囲内であり、『割安株が配当再投資で自己増殖する』というコンセプトに魅力を感じる人には有力な選択肢にはなると思います(65銘柄を個人口座で管理するのはかなり大変。ETFで完結するのは大きなメリット)。

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