インデックス投資は低コスト・地域分散・長期保有がキーワードの投資になります。ざっくり言えば、eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)に代表されるインデックスファンドを定期的に購入して20年以上は売却せずに放置する運用スタイルです。
だいぶ粗い言い方ですが、本当の投資初心者は、このざっくりした理解で問題ないと思います。このざっくり概要が頭に入った上で実践と並行しながら、これからご紹介する本を読めばインデックス投資がなぜ優れているのか、なぜ多くの有識者が口を揃えて薦めるのか分かると思います。
なお、ご紹介する順番は、この順番で読むのが一番頭に入ってきやすいのではないかと個人的に思う順番です。そして、3つのキーワード『低コスト・地域分散・長期保有』がそれぞれ重要だと言われる理由はなんだろうかと自分の中で意識しながら読むのがおすすめです。この理屈が分かればインデックス投資の大部分は理解したと言えますし、長期保有をする中で訪れる株価不調の局面でも迷いや不安がなくなると思います。
敗者のゲーム(チャールズ・エリス)
値段:2,200円(Kindle版1,980円)
一冊目はインデックス投資の優位性を分かりやすく説明する1冊である『敗者のゲーム』です。書名はチャールズ・エリスの投資哲学を端的に示したもので、テニスでプロの試合がレベルの高いショットを決めた方が勝つ勝者のゲームだとするならば、アマチュアの試合は(相手に負けるのではなく)ミスをより多くした方が負ける敗者のゲームであるという例えに由来します。
投資は勝者のゲームと敗者のゲームであれば、後者に近い性質を持っており『勝つことよりも、いかにミスをなくして負けないようにするか』に気を配ることが投資で成功する秘訣であり、その具体的な手段として最適なのがインデックスファンドであるというのがエリスの主張です。
この本の良いところは、主張がわかりやすく、理由説明や例示も簡潔で読みやすいところです。インデックス投資をすすめる良書は数多くありますが、必要な考え方を最もわかりやすく提示してくれていると個人的には思います。それゆえに、この1冊を2度、3度と繰り返し読む方が効果が高いとさえ思います。
インデックスファンドについてまだよく知らない方が初めて読む1冊としても、インデックスファンドの優位性について頭の中を整理する復習用の1冊としても大変おすすめです。
インデックス投資は勝者のゲーム(ジョン・C・ボーグル)
値段:1,980円(Kindle版1,300円)
こちらも初心者でも非常に読みやすい1冊になっています。ジョン・C・ボーグルは個人投資家で知らぬ者のいないバンガード社の創設者であり、世界で初めて個人向けのインデックスファンド(The Vanguard 500 Fund)をこの世に提供した人物でもあります。つまり、本書はインデックスファンドの第一人者によるインデックス投資の優位性に関する解説本です。
簡潔で分かりやすい理屈が統計的事実で裏付けられていく構成が非常に読みやすく、なぜインデックス投資に優位性があるのかという問いに対してシンプルに答えを与えてくれるような一冊です。本書も上述の『敗者のゲーム』と並んで初心者にもおすすめです。
本書の特徴はS&P500の成功体験がベースになっている点です(敗者のゲームはもう少し一般化された見地からインデックスファンドが語られています)。これはボーグルがインデックスファンドの中でもS&P500に連動する投資信託の開発のパイオニアで彼のライフワークであった背景が多少なりとも影響しているのだと思います。
グラフや統計的な内容が多い方が読みやすい方は、敗者のゲームよりも『インデックス投資は勝者のゲーム』の方が手によりやすいかもしれません。個人的には両方とも非常に読みやすいと思うので、好みの差だと思います。本書もインデックスファンドを理解するための最初の1冊として分かりやすさ・内容の充実度ともに最高の1冊です。
ほったらかし投資術(山崎元、水瀬ケンイチ)
値段:869円(Kindle版 594円)
日本人向けに特化したインデックスファンドの実用書です。上述の2冊のうちどちらか(または両方)を読んだ後の2冊目としておすすめな一冊です。山崎元さんは『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』などの著作が有名な金融リテラシーの啓蒙家として第一人者的な方です。水瀬ケンイチさんは日本では最古参であろうインデックスファンドの投資ブロガーの方ですね。
このお二人が、『日本人が具体的にどのようにインデックス投資を行えば良いのか』を言い切り型で解説した実用書です。
”言い切り型”というのが本書の最大の特徴で、初心者が迷わないようにあえて断定的に行動内容を示した点が斬新だと思います。何はともかく行動して実践経験の中で活きた学びを得ることが資産運用では何よりも重要です。その上で、分かりやすく道を示してくれるのは多くの投資初心者にとってありがたいのではないでしょうか。また、お値段も非常に良心的です。
なお、究極的には万人にとっての画一的な最適解は存在しない(最後は自分の頭で考えて自分で判断することが大切)というのが持論というのもありますが、言い切りの内容には一部同意しないところもあります。しかし、自分の考え(オリジナル)というのは優秀な人の考えを基礎として吸収した先にあるものなので、この本は一般的な正解(基礎)を学ぶ上で非常にありがたい一冊なのかなと思います。
ウォール街のランダムウォーカー(バートン・マルキール)
値段:2750円(Kindle版 2,475円)
『敗者のゲーム』および『インデックス投資は勝者のゲーム』と並びインデックス投資の古典的名著とされる1冊ですが、内容は3冊の中で一番難しいです。前者2冊と比べると内容がよりアカデミックであり、インデックス投資の優位性を直接的に説明するというよりかは、学術的な理論や分析が中心で周辺的な話も多く、脇道にそれることも多いので読解力も必要になるかと思います。
要約すると、『市場を予測して勝とうとすること(市場平均を上回ることを目指す)のは無駄である』というのがプリンストン大学で博士号を取得した経済学者であるバートン・マルキールの主張であり、その主張を裏付ける学術的分析が展開されます。要すれば、インデックス投資に勝つ努力は報われない(少なくとも学術的に裏付けのある方法はない)ので無駄にコストや時間をかけるのではなくインデックスファンドに投資して長期間放置するのが最も賢いやり方であるということです。
個人的にはインデックス投資の良さを理解・実感している投資経験者が学術的な裏付けとして知識を深めるのに有用な1冊だと思います。

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