日本人は長らく貯金一択の民族でした。バブル崩壊までの日本は預金金利は6%を超えていましたので、元本保証の上で年率6%(12年で資産が2倍になります)が実現可能な資産形成には最適の国でした。
しかし、今日では銀行金利はどこも年率0.001%で昔の資産形成方法は通用しません。
この年率0.001%では資産が2倍になるには7万2,000年かかる計算です。このことが理解出来ている人は、なぜ日本人が年々貧しくなっているかきちんと理由を分かっており、今の時代にあった資産形成を始めています。
この時代に合った資産運用は「インデックスファンド」への投資ということになるのですが、本日は、なぜインデックスファンドが資産形成の最適解なのかについて改めて考えたいと思います。
アクティブファンドの過去の勝率(過去の実績)
1970年に米国で誕生した株式ファンド355本が2005年までの35年間にどのような記録を残したかが、ジョン・C・ボーグル(*)の著書で紹介されています。
(*)バンガード・インベストメンツ社の創業者の一人にして、インデックスファンドの生みの親。
まず、2005年時点で全体の6割に相当する223本が消滅(償還済)となっていました。残りの132本の年間平均リターン結果は次の通りです。

生き残った4割のファンドでも、81%は市場平均に勝つことが出来ないのです。そして仮に運良く20%に入れても、そのうちインデックスファンドの年間平均リターンに3%以上の差を付けることが出来たのは僅か2本です。
355本のうち2本なので、確率としては、0.57%です。忘れてはならないのは、223本は運用を続ける事すら出来ず、残りも45%は市場リターンに大きく劣後しているという事実です。
一方で、市場平均リターンを超えることが出来たとしても、大勝ちする可能性は僅かに0.57%。ギャンブルとしてもあまりに割の合わない数字ではないでしょうか。
個人的には6割のファンドは生き残ることさえ困難という点が驚きです。資産形成は生涯かけて行うものですから、アクティブファンドは資産形成との相性が良いとは言えないことは過去の実績が物語っています。
アクティブファンドが市場に勝てる確率(シミュレーション)
過去の実績では、アクティブファンドは市場全体に投資するインデックスファンド(市場の平均リターンに連動)に対して不利であるという結果が出ています。
この結果は確率論に基づく分析でも必然的にそうなることが分かっています。アクティブファンドはシンプルに言うと「市場全体から株価が上がる銘柄だけ残して、下がるものを取り除く」ファンドです。
実際には、各銘柄の取捨選択に加えて、選んだ各銘柄をどの割合で保有するか等の判断がファンドマネージャーの腕の見せ所というわけです。
この組み合わせは無限大です(だからこそ、もしかしたら大当たりがあるんじゃないかと錯覚するのです。まるで宝くじのように)。
しかし、この無限大に思える組み合わせもコンピューターを駆使すれば検証が可能です。この検証により、人が思うほど市場平均に勝てる組み合せは多くなく、その組み合わせを毎年実現するのは天文学的な確率ということが既に立証されています。
この検証をモンテカルロ・シミュレーションと言います。

このシミュレーションによると、市場平均に勝つ可能性のある組み合わせを辿るとアクティブファンドの1年目の勝率は29%になります。この時点でかなり不利であることが分かりますが、メディアは敗北した70%には目を向けず、偶然2倍や3倍になったアクティブファンドばかりを取り上げるので、あたかもアクティブファンドに投資をしないことが損かのような印象を個人投資家に与えるのです。
最初の数年上手くいくケースも、50年後に市場平均に勝ち続けるのは2%だというシミュレーション結果です。
この数字から合理的に導き出される結論は、あなたの大切な資金はアクティブファンドに預けても期待通りの成績は上げてくれないということです。
アクティブファンドはなぜ負けるのか
ここまでアクティブファンドは確率論的に勝てない(少なくとも勝者に巡り会える投資家はまれ)投資方法であり、過去も勝てていないことを紹介しました。
次になぜ勝てないのかを考えたいと思います。
市場の効率化は加速している
株式市場には機関投資家と言われる、日夜市場に目を光らせている仕事人が最新のコンピューター機器を使用して取引をしています。仮に、割安に放置されている株などは、この仕事人の誰かが直ぐに見つけます。このようにプロが互いに相手を出し抜こうと凌ぎを削るうちに、全ての銘柄は妥当な水準(つまり、平均)に落ち着くことになります。
これが、効率的市場仮説と言います。しかし、これには前提があります。皆が平等に同じ情報にアクセス出来ることが条件です。
どの国も市場取引委員がインサイダー取引を厳しく取り締まるなど、効率的な市場形成及び維持に努めています。このような環境で市場に戦いを挑むのは賢明とは言えません。効率的市場でプロが市場リターンを超えようとするのは、同じ体格で同じ武器を持った敵に対して戦いを挑むようなものです。
インターネットやSNSがなかった時代は、ライバルよりも早く情報を掴んだり、情報が世間一般に知れ渡る前に他の人より稼ぐというチャンスが多少はあったかもしれません。
しかし、それは年々難しくなって来ています(情報技術の進化も関係しているのでしょう)。投資の神様と言われるウォーレン・バフェットでさえ、その神がかり的なリターンは年々市場平均に近づいてきています。
投資の神でさえ、効率的市場仮説の力には抗えないのに、その実力に遥かに劣るアクティブファンドが効率的な市場を出し抜く可能性は無いに等しいでしょう(少なくとも、そんなファンドに巡り会える確率は宝くじと同じです)。
コストが高すぎる
インデックスファンドは特定の指数(例:S&P500)に連動させるだけなので、誰がやっても同じで優れた頭脳や分析は不要です。
しかし、アクティブファンドのマネージャーは”頭脳明晰”で”優れた銘柄選定能力”をもつごく限られた人材とされていますから、莫大な人件費がかかります。また、アクティブファンドは多くの人に投資してもらうため宣伝・広告費用が大きくかかります。
インデックスファンドの運営に比べてお金がかかるという事です。このコストは当然、顧客が上乗せして払うことになります。
インデック投資の代表格であるVOOやVTIといったETFであれば販売手数料は無料で、信託報酬も0.03%(100万円投資しても費用は年間300円です)。
しかし、アクティブファンドはコスト回収のため販売手数料で5%、信託報酬で1.5%など平気でとります。この手数料をみて何も感じない人は投資をすべきではありません。
仮に30年間の資産形成にこのアクティブファンドを使用する場合、インデックスファンドに対して余分なコストが莫大に発生します。
販売手数料で5%、信託報酬で1.5%のファンドの年間手数料は(5%÷30)+1.5%=約1.67%です。VTIやVOOの年間手数料は0.03%なので、その差である約1.64%が余計に発生するコストです。
毎月5万円を30年間投資するとします、この1.64%を無視した場合に、どれだけのリターンを取り逃がすことになるか理解すれば、0.1%のコストであっても注意深くなるはずです。

年間1.64%のコスト差は30年後には2,300万円以上の差につながるのがファクトです。シミュレーションをシンプルにするため、販売手数料の発生は最初の1回としています。それでこの差ですから、実際には最終的なリーターンの差は2,000万円程度では済まないでしょう。
この数字が物語るのは、「アクティブファンドは戦う前から負けている」ということです。過去の統計を思い出してください。
インデックスファンドに対して年間平均リターンで3%以上のリードを奪えるアクティブファンドは僅か0.57%だったということを思い出してください。
大切なことなので、2度言います。「アクティブファンドは戦う前から負けている」のです。
インデックスファンドが資産運用の最適解の理由
本記事の前半で、アクティブファンドは過去の実績も、理論上もインデックス投資に対して成績で負けてきたことを紹介しました。
本記事の後半では、なぜインデックスファンドが優れていて、個人投資家向きの投資なのかを解説します。
プラスサム・ゲーム(負けない投資)
アクティブファンドはゼロサムゲームです。利益の源泉となっているのは、賭けに負けた人のお金だからです。その勝利自体は価値を生み出していません。市場参加者AからBに利益が移動することで、Bは儲かり(+50)、Aは損(−50)をします。これがゼロサムゲームです。
全員の得点が50点で平均も50点なら誰も平均点以上をとる事は出来ません。平均50点の市場で、誰かが80点をとるという事は、誰かがその分の得点を失ういう事です。
一方で、インデックスファンドの利益の源泉は市場の成長です。市場自体が成長をして、平均点が50点から70点に上がれば、誰の得点を奪う事もなく全員が70点を取ることが可能です。これが、プラスサム・ゲームです。
この平均点が50から70点に上がる市場で、80点を狙うと市場平均に勝つ可能性もありますが、それは負ける可能性と引き換えになります。
重要なのは、市場平均に連動するインデックス投資を成長する市場で行えば確実に負けないという事です。
ゼロサムゲームをプレイするのではなく、プラスサムゲーム(負けない戦い)こそが資産形成の王道です。
投資内容が明確だから(理解できる)
投資の神様であるウォーレン・バフェットは自分で内容を理解出来ないものに関しては、投資をしないことで有名です。
内容が理解出来ているからこそ、どんな状況でその投資が上手くいくのか、また失敗するのかが分かるのです。そして投資の状況が分かって初めて、正しい判断が下せる訳です。
この観点から、インデックス投資は明快です。投資には次のリスクがつきものです。リスク要素は増えれば増えるほど、複雑で内容の理解が難しくなります。
インデックス投資は下記のリスクのうち、市場リスクのみを取る投資方法です。つまり、インデックス投資の場合、「その市場が今後も成長するのか」という観点でのみ判断が可能です。
例えば、S&P500の指数に連動するインデックスファンドに投資する人は、その投資が成否を見通すにあたっては、米国株式市場が今後も成長するかどうかだけ判断出来れば良いということです。
米国経済の未来が今後も明るいと思えば、投資する!米国経済はもう成長しないと思えば、投資はしないと判断根拠がシンプルに理解できる投資です。
一方で、アクティブファンドは①〜⑤まで全てのリスクが複雑に絡みます。
これらに複雑な要素を読みといて、「どのような場合(状況)でこのアクティブファンドは(高いコストを差し引いても)平均的なリターンに落ち着くインデックスファンドに勝てるのか」ということを理解して、実際にそのような状況になる可能性が極めて高そうということが判断できるのであれば、アクティブファンドを選んでも良いかもしれません。
しかし、実際にアクティブファンドを選ぶ個人のほとんどが、過去のリターンが良かったというだけで投資をしています。
「なぜ、そのアクティブファンドは好成績を残せたのか、そしてその強さは今後も維持される見込みなのか」この質問に対して明快に回答出来ないのであれば、投資の中身を理解していない、つまりギャンブルをしているのと同じです。
インデックスファンドへの投資であれば、次のように質問に対する回答が明確に出せます。
(質問)インデックスファンドが好成績を残している理由は?
(回答)①低コストだから②株式市場が成長しているから
(質問)インデックスファンド(例:S&P500)の強さは今後も維持されるのか?
(回答)米国経済は今後も成長していく(株式市場も同様)と予測される。従い、米国経済に投資するのと同義であるS&P500に連動するインデックスファンドは今後も強い。
個人がプロに勝てる唯一の投資方法だから
米国市場全体に投資する指数連動型(S&P500)の投資信託またはETFに投資をした場合、投資期間が15年を超えると、過去のどの期間を切り取ってもマイナスにならないことが事実と知られています。
先に紹介した通り、自称プロの金融エリートが運営する投資ファンドの80%はインデックスファンドの年間平均リターンを上回る事は出来ません。
つまり、インデックスファンドに投資していれば、金融街のエリートの80%よりも良い成績をあげることが可能だと言う事です。
Simple is bestは投資の真理です。
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