【上級者向け】日本の証券会社の安全性と適切なリスク管理

証券会社破綻,リスク管理 マネーリテラシー

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【本記事の要旨】
*金融資産が小さなうちは過度に気にする必要はないです。本記事は上級者むけ。

顧客資産を証券会社の経営能力不足から守るための仕組み(分別管理)は投資家にもよく知られた話。しかし、資産運用の規模が大きくなってくればブローカーリスクも考えておきたい。日本における投資家保護は改善の余地がある(正直もう少し頑張ってほしい)。

リターンの源泉と関係ない人的リスクを一部でも投資家が負うのは不本意。

【制度概要などは一次ソースを確認して正確性の確保に務めていますが、私は専門家ではありません。また、リスク管理方法について私ならどう考えるかを記したもので推奨を図る意図はありません。本記事の情報を利用して何かを行う際は自己責任でお願いします】

日本人の多くは銀行口座を持っています。普段はあまり意識していないですが、預金にはペイオフという消費者保護制度があり銀行が破綻しても1,000万円とその利息が国により保証されます(利息がつかない決済用口座なら補償範囲は全額)。このため、私たちは銀行の経営能力や財務基盤を事細かに精査しなくても安心して『お金を他人に預ける』ことができるのです。

それでは証券会社に預けている有価証券や現金はどのように守られているのでしょうか。もし、証券会社が破綻したら私たちの大切な金融資産はどこまで補償されるのでしょうか?

分別管理義務というのが法律で決まってるのさ。全額保護されるというのが答えだな!!

本記事はこのように考えている方向けの記事です。分別管理義務により投資家資産は100%保護されるというのは厳密にいえば間違えです。これは資産保全という当たり前の仕組みがあるというだけで、証券会社が資産保全義務を守らなかった(守れなかった)場合にどうなるかという視点が欠けています。

投資家としては資産保全の仕組みを知って安心するのではなく、より深く資産保護の制度内容までチェックをして理解しておくべきでしょう。多くの日本人投資家がこのテーマについて、あまり気にしないのはホームカントリーバイアスだと思います。もしこれが、外国の会社だったら『どう安全が担保されているのかもっと良く知りたい』と思うのではないでしょうか。本来は国籍が日本でも外国でも気にすべきリスクは変わらないはずです。

なので今回は証券口座利用における投資家保護制度について掘り下げていこうと思います。

分別管理義務(資産保全の仕組み)

こちらについては、投資経験がある程度ある人ならば復習的な話ではあると思いますが、私たちが投資信託・ETF・株式・債券を購入して投資をしている裏には数多くの関係先が存在しています(以下図表参照)。分別管理とは、金融商品顧客販売する証券会社や金融機関が法令により自己資産と顧客資産を分けて管理する義務およびその仕組みのことです。

分別管理仕組み,図

私たちは『投資』というと証券会社のホームページ上で買い注文や売り注文を出すだけの簡単なクリック操作を連想しますが、お金の実際の動きを追っていくと『投資』は複数の関係者が成立に関与する複雑なプロセスです。具体的には投資工程を大きく3つの役割(販売・運用・管理)に分けて、それぞれの役割を別々の会社が担うことが法律で決まっています。これが図表で見た時の分別管理になります。

分別管理が機能しないリスク

分別管理が機能するためには(1)関係者の意思(2)労働者の能力・質、の2つが担保される必要があります。『痴漢は犯罪』と法律で定めようが駅構内にポスター貼ろうが痴漢が世の中から消えて無くならないように、現実として効力を持つかどうかは結局のところ関わる人間次第なのです。

分別管理は三権分立と似ているかもしれません。日本のような先進国は『三権分立』と言って国を統治する力を行政権・司法権・立法権という3つに分けて、それぞれを別々の組織に与えることで互いに牽制する構造にしています。理由は権力を一人に集中しすぎると権力行使が恣意的になったりと統治内容が腐敗しやすくなるからです。

分別管理も同じような発想です。顧客に金融商品を販売して、注文執行から運用までをある企業が独占できる仕組みだと不正を行いやすくなるし、また不正が外部から発見しずらくなります。分別管理は構造的に不正を難しくすることで顧客資産の保全を図る仕組みです。

しかし、人類史を紐解けば三権分立が形骸化して機能しなくなった例もあるように、分別管理の仕組みも顧客資産の安全性を100%担保するものではありません。なぜなら、細分化された役割のうち一つでも形骸化してしまえば分別管理は機能しないからです。

リスク①:証券会社のリスク

証券会社が悪意を持って分別管理を怠り、顧客資産を自社の事業活動に使い込み経営破綻するようなパターンですね。また、悪意がなくてもシステム等の機能的不備や人的ミス(例:雑なチェック/管理)などが重なると顧客資産が信託銀行に適切に委託されず証券会社に残存する状態が発生するかもしれません。その状態で証券会社が経営破綻すると、分別管理して保全されているはずの顧客資産が欠損した状態で財産整理となるかもしれません。

なお、後述の資産保護制度のこともあるので、証券会社から発行される残高証明書はダウンロードして手元に持っておくのが安心ですね。何かあった時に自分が請求権を持つ資産額のエビデンスになるので。(特に運用資産が大きくなってくれば)証券会社の管理にミスがあるわけないとタカを括るのではなく、定期的に取引履歴と残高を確認して間違いがないか自分の目で確認する姿勢が大切です。

リスク②:信託銀行/決済会社のリスク

証券会社が義務を果たしていても、信託銀行が自己資産と預かり資産の分別管理を適切に行なっていないと全体としての分別管理も絵に描いた餅です。信託銀行も法令によって自己資産と預かり資産を別々に管理することが義務付けられています。しかし、繰り返しですが法的義務と実態は必ずしもイコールではありません。当事者に悪意がなくても人的ミスや能力不足による事故は可能性として存在します。

特に現代の帳簿管理はシステム化されており、銀行員はシステムのことなんて詳しくは分かりませんから業務委託しているシステムベンダーの質にも資産管理の安全性は依拠するでしょう。そして、私たちは信託銀行の業務実態まで伺い知ることはできません。やはり、不測の事態に備えて、自分の保有資産のエビデンスは手元に押さえておくようにしたいですね。

リスク③:監査法人のリスク

分別管理の機能をより強固なものにするため、外部監査を受けることになっています。財務諸表が内容に問題がないか、誤り、不正などがないかの監査を受けるように証券会社や信託銀行も分別管理義務を適切に果たしているか外部監査を受けます。

癒着とは言わないまでも監査業務がマンネリ化しないかというリスクがまず思い付きます(信用格付機関の格付審査に利益相反が度々指摘されるように)。監査法人が監査を行う相手はチェックを受ける対象でありながら、その監査料を支払う顧客でもあります。そして、監査法人の代わりはいくらでもいるのです。監査先からお金を貰いながら続ける監査業務が形骸化しないリスクはゼロだろうか(監査法人はコンサルティングサービスを展開しているところもあり、もし被監査主体(またはそのグループ会社)がコンサルティング業務の顧客でもあったら牽制関係が曖昧になるリスクは高まると思います)ということは個人的に気にします。

また、もっと単純なところでは監査法人の担当者の質というリスクもあります。監査法人は結局のところ部外者なので中の人ほど会社のことを知らないし、他にもたくさんの会社を同時並行で監査しているので割けるリソースには限界があります。その中でポイントを外すこともあるでしょう。

日本の投資家保護制度(分別管理が守られなかった場合)

分別管理が機能しなかった場合のセキュリティとして日本投資者保護基金という業界団体が1,000万円を上限に消失資産を補償しますこの保護基金は加盟企業の拠出金により運営されており、金融商品取引法により国内で証券業務を営む企業は加盟が義務付けられています(加盟企業はこちら)。基金の最高意志決定機関である総会と定款が定める事項と業務運営にかかる重要事項を決定する理事会により運営されています。

日本投資者保護基金
出典:日本投資者保護基金『基金について』
証券会社が破綻したら
出典:野村證券『投資者の保護について』

日本の証券会社は安全か?

分別管理と保護基金制度からなる投資家向けセーフティーネットを見てきましたが、日本の証券会社は安全だと言えるのでしょうか?

簡単にざっくりと括るのであれば、『たぶん安全なのだろう』とは思います。日本の証券会社や信託銀行などは金融庁の審査を受けて、登録事業者として営業しているほかリクルート市場での地位などに鑑みれば人的リスクについても一定の質は確保されているだろうと予想されるからです。しかし、それでも大金を置いておくのに不測の事態(資金消失)についてあり得ないという姿勢、無策でいても良いかと言われると、それは別かなと思います。

家を借りる時には火災保険に入りますし、自動車を運転するのに自動車保険に加入します。圧倒的多数は火事に合わないし、交通事故を起こすこともないでしょう。それでも、加入する(もしくは義務である)のはどんなに確率が低くても発生したら致命的だからです。

銀行においては保険の役割としてペイオフがあります(普通口座の補償上限は1,000万円と利息までですが、利息のつかない決済用口座であれば全額補償されます。出典:金融庁)。証券口座においては1,000万円が上限です。もし、将来的に運用資産が数千万円を超えてくるのであれば保険としては弱いなというのが個人的な感想です。

投資家が負うべきリスクはリターンの源泉となる市場リスクであって、リターンとは無関係のブローカーリスクなどプラットフォームに起因するものは業界が負うべきというのが私の意見です。また、後述のとおり、米国の事情と比べるとはるかに見劣りします。

運用資産が数千万円単位は多くの場合、大切なお金を長期に渡って市場リスクに晒し続けた結果でしょう。そして、長期運用とはその間に物品やサービスと交換できたであろう権利の放棄の連続でもあります。そこまでして預けてきたお金の補償範囲が1,000万円というのはフェアであるとは私は思いません。また、金額や想定運用期間を考えた場合にリスクの発現は致命的で1,000万円程度では人生が大きく狂う人もいるでしょう。

米国証券口座の安全性及び投資家保護

米国にはFINRA(Financial Industry Regulatory Authority)という証券会社を監視・規制する業界団体があり、米国内で証券仲介ブローカー業務を行うには、当団体に認可を受けて登録する必要があります。政府組織ではありませんが、自主規制組織として業界企業が正しく顧客資産を取り扱うように目を光らせています(違反が加盟企業にあった場合はFINRAが罰金なども課します。参考

FINRAは22名の理事からなる理事会(Board of Governors)を最高意思決定機関として運営がなされています。11名は証券業界の外から選出される外部理事(Public Govenors)、10名は業界理事(Industry Govenors)で構成されます。また、業界理事については加盟企業を大中小で分類した区分け毎に議席の割り当てがあり運営判断のバランスに偏りが発生しないように配慮がされています。

理事会メンバーにはVanguard社の最高経営責任者(CEO)であるモーティマー・J・バックリーや、オバマ政権時代に大統領顧問を務めた現Goldman Sachsの最高法務責任者であるキャスリン・ルームラーなどが名前を連ねています。

日本人でも知っているような巨大企業も例外なくFINRAに加盟しており、分別管理の義務など監査を受けています。

BlackRock Securities

BlackRock Investments

BlackStone Securities Partners

Bloomberg Tradebook

BNP Paribas Securities Corp

BNY Mellon Capital Markets
Vanguard Marketing Corporation 
StateStreet Global Markets, LLC

Charles Schwab & Co, INC. 

投資家保護の仕組み(個人投資家の資産が被害にあったら)

また、このようなFINRAの監視の網目を逃れた不正により、個人投資家の資産に被害が生じた場合には証券投資者保護公社(SPICの補償を受けることができます。SPICもFINRAと同じく米国証券取引委員会(SEC)の認可を受けて米国内で証券業務を行うブローカーや決済会社が加盟を義務付けられている米国政府機関です。

SPICは7名の執行役員(directors)によって運営されており、5名は米国大統領が指名、残りは米国上院議会との協議により1名は米国財務長官が、もう1名は米国連邦準備制度(FRB)が任命することになっています。

SPICにより顧客資産は合計50万米ドル(うち現金上限は25万米ドル)まで保護されます。なお、この補償適用条件として米国在住や米国市民である必要はないと明示されており、米国証券口座を利用する外国人にも保証は適用されます(出典:What SPIC Protects)。

また、主要な証券会社は決済サービス会社(分別管理の信託業務を行う)と保険契約を締結し、SPICの保護の範囲外となる損失についてもカバーするようなセーフティーネットを敷いています。例えば、日本人でも口座開設できる米国証券会社として知られるFirstradeはSPICの補償範囲に加えて有価証券につき37.5万米ドル、現金については90万米ドルまでカバーされるように保険契約をClearing House(清算会社)と契約しています。つまり、トータルで87.5から177.5万米ドルが補償範囲として定められていることになります。

このように米国では、日本円にして1〜2億円単位までは補償されるのがスタンダードです。

米国と日本の投資家保護比較

  米国 日本
規制主体 SEC、FINRA 金融庁
保護主体 政府機関 業界団体
経済的補償(上限) 50万米ドル(約6,000万円) 1,000万円
*1$=120円で計算

投資家保護制度の観点では、質と量の両面で日本は米国に対して大きく遅れています。また、企業努力の面でも米国の証券会社は決済機関や保険会社と補償契約を締結して、個人投資家への経済的補償を上乗せしているところが多いです。

個人投資家がすぐにできるリスク管理

証券会社だろうが、銀行だろうが中の従業員にとって顧客資産は究極的には赤の他人のお金です。私たちも赤の他人にお金を預けるのでれば、意識を高く持つべきだと思います。私にとって大手だから安心というのは理由になりません(結局は赤の他人なので)。私は自分のお金を管理することにおいて、究極的には公的保証しか信用しません。

筆者
筆者

公的保証は国家が消滅しない限り消えませんが、企業に課された法的義務は企業の経営破綻により割と簡単に反故にされてしまいます。民事訴訟をおこしても一文なしの破綻企業からは回収のしようがないですからね。

そして、こうした価値観からですが、証券会社にお金を預ける際には銀行に預金する場合よりも一層高い意識を私は持っています。なぜなら、銀行預金に何があれば日本国が責任を持って補償しますが、証券口座のお金についてはそうではないからです

この違いの根底には、投資や資産運用というのは自己責任で行うものという考えがあります。国は法律や規制等により消費者保護の仕組みを規定して、円滑な投資環境を整備はしてくれていますが、何か起きた場合は当事者間で解決するしかありません。国は不正行為を正すべく司法権や行政権を行使することはあっても、税金を投入してまで失われた個人資産の救済まではしてくれません

幸いにも日本の大手企業であれば、そこまで心配する必要はないのかもしれません。また、金融資産が小さなうちは別にそれで良いのかもしれません。しかし、運用資産が数千万円単位になってきた時に、『大手だから安心』という理由だけで赤の他人に大金を預けるのは個人的には一抹の不安があります。日本の大手企業でも不正行為を行い、国から業務停止命令やら行政罰を課されている企業は今までもあります。やはり、(特に日本政府が国民に対して貯蓄から投資へを掲げるなら)日本にも米国と同規模の補償制度を期待したいです。

米国証券会社(ブローカー)は取引手数料が無料のところも多いです。かたや日本の証券会社は一部の投信信託等を除いて取引には毎回手数料を取ります。だったら補償制度も業界でもう少し整備して欲しいというのは贅沢な要望ではないでしょう。

また、日本人は英語が一般的にできないことで、情報の非対称性が生まれたり、そもそも手続きできない(内部的な参入障壁)ことが理由で日本の証券会社はある意味で日本人市場を独占しています。もし、これがグローバルでの競争市場に組み込まれていればセキュリティや手数料の水準は、競争原理が働き消費者に有利なものになるはずなのにと思います。

そうは言っても、現状はすぐには変わらないですし、資産運用は今の多くの日本人に必要でしょうから与えられた環境で個人が何ができるかを考えてみたいと思います。

リスク管理 レベル1

もし、あなたの運用資産が1,000万円以下だったり少しはみ出るぐらいなら、特に何も心配する必要はないでしょう。日本投資者保護基金の補償の範囲内ですし、それ以上のプロテクションを求めるのは実益と手間が折り合わないと思います。

リスク管理 レベル2

もし、運用資産が増えてきて数千万円を超えてきた場合、すぐにできるのは日本国内での証券口座の分散です。ユダヤ人の教えにも『大切なものを全て同じカゴに盛るな』という格言がありますね。一人の人間が想定できることには限界があります。想定外は起きて当たり前のリスクと考えることです。

想定外が発生しても、致命傷を回避できるように事前にダメージコントロールの一手を講じておくのが優れた人のリスク管理策です。利便性との兼ね合いではNISA口座と特定口座で運用する証券会社を分けておくというのが多くの人にとって効果的かつ手間の少ないアプローチになると思います

例えば、NISA口座は楽天証券、特定口座やiDeCo口座はSBI証券で保有するというのが具体的な一例になるでしょう(逆でも構わないと思います)。この程度の工夫であれば大した手間にはならないし、得られる効果やメリットを考えると割の良いリスク管理策になるでしょう

リスク管理 レベル3

米国証券口座を利用する。この方法には手間がかかるというデメリットがありますが、メリットも大きいです。つまり、デメリットよりもメリットの方が大きいと感じる方に価値のあるリスク管理方法と言えます。

以下は私が主観的に各項目で○、△、✖️で評価した表になります。

  日本 米国
取引手数料
補償水準・仕組み ✖️
運用の選択肢
海外駐在(移住) ✖️
非課税制度の利用 ✖️
確定申告の手間 ✖️
日本語で完結 ✖️

この比較表から導かれる見解の一つとして、このリスク管理方法は人を選びます。このリスク管理方法は①金融資産が大きい②英語での情報収集・コミュニケーションに抵抗がない③確定申告作業が自分でできる、の3条件を満たす人には有効な選択肢です。逆に、どれか一つでも欠けるなら難しい。

近年はフィンテック企業の活躍などにより外国送金や為替手数料は限りなくゼロに近づけることができるようになっています。こうした背景や米国と日本の投資環境(利便性・コスト競争力・補償水準)の優劣に鑑みれば、デメリットを乗り越えられる人にとって米国証券会社はリスク管理のみならず資産運用の質の面でもメリットは大きいです。

①金融資産が大きいこと

金融資産を増やす定跡として非課税制度をフルに利用することがまずは第一です。日本人で言えばNISAやiDeCoです。米国の証券会社には当然ながら日本の非課税口座を開設することができません。日本の非課税口座の枠を使い切らないうちは、米国よりも日本の証券会社を利用する方がメリットは大きいです。

金融資産が非課税枠を超えるほど、大きくなり、日本の1,000万円という補償範囲に不満を感じる人が米国証券会社を検討するという順番でしょう。これが正しいニーズだと個人的には思います。

②英語で情報収集・コミュニケーションが取れること

ニーズはあっても、使いこなす能力が自分にあるかの確認も忘れてはいけません。米国の証券会社は手続や問い合わせで利用する言語は英語になります。

最低限の読み書きはできないと証券会社とコミュニケーションが取れないので、問題となります。また、何かあった時に補償を受ける際も対話する相手は米国人ですから英語ができなければ米国水準の制度恩恵を受ける権利があっても絵に描いた餅です。

英語能力は一つハードルになるでしょう。ただ、海外駐在や移住が予定される人は、日本法上の非居住者になる段階から日本の証券会社(SBI証券楽天証券も例外ではない)では運用継続できなくなるので超えておきたいハードルではあります。

③確定申告作業が自分でできること

日本の証券会社で特定口座を利用していれば、確定申告は証券会社が代行してくれるので自分では何もする必要がありません(外国税控除や配当控除など税還付を受けたい人が自主的にやることはあっても、義務的な作業は発生しない)。

しかし、米国の証券会社には特定口座の仕組みはないので、自分で確定申告作業を行う義務が発生します。米国の証券会社を利用している人は少ないので、情報収集にハードルがあります。自分で調べて、考えて必要に応じて税務署の職員とコミュニケーションが取れる程度のビジネススキルは必要になるでしょう。

確定申告に関連する税法はもちろん、必要な作業内容と準備資料について国税庁のホームページで調べた上で作業するわけですが、資料作成の実務的なポイントについてはホームページの情報だけではわからないことも出てきます。そんな時は予約して税務署に直接質問に行くなどして、1個づつ課題を潰していくということが必要になります。おそらく、初見でホームページの情報だけを元に完璧に資料を用意できる人はいないと思います。

このプロセスをこなすだけの能力が実は一番ハードル高いんじゃないかと個人的には思います。なお、ハードルを上げてしまいましたが、(頻繁に取引する訳でもないかぎり)慣れてしまえば資料作成は15分程度でできるし、そこまで過酷な作業というわけではありません。普段から自分の力で調べものができている人は十分に対応できると思います。

最後に

資産運用は自己責任であり、赤の他人にお金を預ける行為です。そこにどのようなリスクとプロテクションがあるのかはしっかりと認識しておくべきです。その上で、手間や効果を検討して必要なリスク管理を講じる必要があります。

個人的には日本の投資環境にはまだまだ改善点が多いと思います。投資家として負うべきリスクはリターンの源泉である市場リスクや企業リスクであって、リターンとは関係のないブローカーや信託銀行の人的リスクを一部でも負うのは不本意と言わざるを得ないからです。

現行の日本の投資家保護のレベルでは、個人投資家がブローカー信託機関の人的リスクを負ってしまう余地が大きいです。

日本人だろうが米国人だろうが同じ投資対象であれば得られるリターンは変わらないのに資産保護のレベルが全然違います。つまり、同じ投資内容でも総合的には日本人の方が米国人よりも高いリスクを負っています。この観点だけで見れば、日本の投資環境は米国の完全下位互換です。日本が「貯蓄から投資へ」を掲げていくのであれば、米国水準とは言えないまでも今よりは努力すべき課題だと思います。国民にさらなる自助努力と学びを促すなら、国も企業もやるべきことがあるでしょう。

この点に関して、個人投資家としてどうすべきか?個々の環境や能力にはよりますが、リスク管理について今より改善できる余地がないかを考える価値はあると思います。

 

筆者
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