世間では意外かもしれないですが、大学教育機関による資産運用は世界中でよく見られます。日本でいうと東大も資産運用基金を持っていますし、英国では著名経済学者であるジョン・メイナード・ケインズ(マクロ経済学の大家、『雇用と利子とお金の一般理論』で知られる)が教鞭をとっていたケンブリッジ大学で資産運用も担当していたのは有名な話です。
そして、世界トップの評判を誇る米名門大学であるハーバード大学も例外ではなく、2016-2017年にかけては414百万米ドル(約476億円、1$=115)もの経済的援助を学生に対して施していますが、その資金の一部は運用利益から捻出されているものです。また、ハーバード大学の教育インフラや研究資金も支えています。
今回はそんなハーバード大学を経済面から支えている同大学の資産運用基金(Harvard Management Company)の資産運用についてみていきたいと思います。
【ハーバード大学投資】Harvard Management Companyとは
Harvard Management Company(以下、HMC)は次のミッションを背負って1974年に設立されました。ハーバード大学が教育界におけるリーダシップの維持・拡大や将来世代の研究に必要なための資金確保を確実にするとあります。
Our mission is to help ensure Harvard University has the financial resources to confidently maintain and expand its leadership in education and research for future generations.
Harvard management company HP
つまり、HMCは『世界トップの教育と研究には多額の金がいる』という身も蓋もない現実的な課題に対するソリューションをハーバード大学に提供するのが目的の組織なのです。そして、そのミッションは確実に履行されております。ハーバード大学への献金は右肩上がりで成長しており、2020年には20億米ドルを突破しています。これまでの累積献金額は約350億米ドルと多大な経済的貢献です。

【ハーバード大学投資】資産運用実績
ハーバード大学の資産運用実績ですが、市場平均(S&P500)や株式:債券=6:4という伝統的なポートフォリオをアウトパフォームする良好な結果を残しています。

直近4カ年のパフォーマンス
ここ4年間の投資成績に関していうと平均14.45%/年のプラスでありましたが、同期間のS&P500は平均16.45%/年に対して2%ほどアンダーパフォームしています(ただし、大学基金は毎年安定して大学側に献金することがミッション(大学もその前提で予算を組む)なのでマイナスリターンにならないことを重視してポートフォリオを構築する傾向にあります)。
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | |
HMC | 10% | 6.5% | 7.3% | 34% |
S&P500 | ▲6.2% | 28.8% | 16.3% | 26.9% |
ハーバード大学の長期運用実績もすごいですが、S&P500もすごい、そしてアウトパフォームするのがいかに大変かがよく分かりますね。ハーバード大学のブランドを用いて結集した叡智も必ずしも市場平均に勝てるわけではないのですから、一般の個人投資家はシンプルにインデックス投資で良いのではないかと思いますね。
また、もう一つの考察としては、『投資=怪しいもの、詐欺』という決めつけから脱却して王道の資産運用について日本人も学ぶべきと思います。金融資産の一部だけでもS&P500に投じておくだけで、ハーバード大学の運用を超える年間16.45%のリターンを得られていたのですから(←これは出来過ぎですが)。確かに、赤字になる可能性もありますが、一部を投資に回すだけでも道は開けます。当たることはまずない宝くじに数万円を払う人は変人扱いされないのに、インデックスファンド等のまともな資産運用をしている人が変人扱いを受ける日本は変な国だと思います。
ハーバード大学は投資をしているというファクトだけは日本人にも知って欲しいです(そして、エビデンスは示せませんがハーバード大学は宝くじ買ってないです)。
【ハーバード大学投資】ポートフォリオ
ハーバード大学のポートフォリオの特徴は、伝統的な投資対象である株式や債券に加えて、不動産やコモディティなどの非伝統的資産(オルタナティブ投資)を組み入れている点です。
近年では世界各国の金融政策により金融市場が歪められており、株式と債券の逆相関性が働かなくなるなど伝統的なポートフォリオバランスが機能しなくなっているとも言われています(また、株式の期待リターンは年々低減しているとも)。そこで、注目されているのがオルタナティブ投資です。株式市場との非連動性や伸び代があるパフォーマンスを期待して一定割合組み入れる機関投資家が少しづつ増えて来ています。

私たちに馴染みのある上場株式への投資は14%程度であり、プライベートエクイティ(HMCはベンチャー投資に積極的)34%とヘッジファンド33%が大きなウェイトを占めるポートフォリオになっています。オルタナティブ投資としては不動産・天然資源が名前を連ねています。また、TIPSは物価連動型米国債のことです(詳しくはこちら)。
2021年の運用成績はプライベートエクイティの+77%が強く全体を牽引しています。
【ハーバード大学投資】ポートフォリオ方針
現行のHMCの経営陣が掲げるポートフォリオ構成の方針は次のように述べられています。一般的に信じられているインデックス効率投資からは乖離しているので驚きもありますが、同時に真似はとてもできませんね(ハーバード大学のブランドと人材登用があるから意味のあるプライベートエクイティやヘッジファンド投資が可能になるわけなので)。

真似はできないですが、このハーバード大学流の資産運用は一般投資家の知らない世界がまだあることを教えてくれます。このハーバード流が吉と出るか凶と出るかは学ぶところが多そうなので、私も引き続きウオッチしていきたいと思います。
やはりインデックス運用が凡人には吉と思いますが。

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